「毛も無く歯も無く足が臭い」というのは地球上でマダガスカル島のみに生息する小型齧歯類「ハゲハヌケアシクサネズミ」のことである。その名の通り、頭頂に毛が無く、歯はまばらにしか生えておらず、そして脚部がとても臭い生物である。とはいえ性格は臆病で温厚、草の陰や石の陰、木のウロなどにひっそりと暮らすことを好む。現在絶滅危惧種として扱われいるが、それは歯があまりないのでまともに餌を食べられないという事情があるのらしい。……というのは全て冗談で「毛も無く歯も無く足が臭い」というのはなにを隠そうこのオレのことである。
毛は無いわけではなく、逆にこの年にしてはまあまあ残っている方ではあると思う。ただ毛足が細く腰が無くなってきており、なんだかペタン、フニャッと頭に貼り付いているといった感じだ。頭頂部は結構寂しい。どのぐらい寂しいかと言うと冬の夜の雨にけぶる関ヶ原古戦場の如き鬼哭啾啾たる有様である。この間ふと気が付いたら頭の上を鬼火が飛び交っていた。そのうちオレの寂しい頭頂部に落ち武者の霊がさ迷い歩いたりし始めるかもしれない。
フニャフニャの毛質になってしまったせいで、遂に整髪料を使わなくなった。今まではスプレーやジェルやムースなんかでヘアスタイルをまとめていたものなのだが、そもそもスタイルしなければならないヘアが無くなってきているので必要としなくなってしまったのである。スプレーだのジェルだのムースだのと随分といろいろな整髪料を使っているように思えるかもしれないが、実は若かりし頃のオレは物凄い固く太い毛髪だったうえに結構な癖毛だったので、これら整髪料を使用しないと中洲産業大学の森田教授みたいな頭になってしまうのである(オレも古いな)。
それをこの間きっぱり止めてしまった。止めたのは昔から通っている床屋のオヤジに「最近髪の毛が細くなって―」とか愚痴っていたら「整髪料で頭固めると毛根に負担を掛けるから止めたらー?」と言われたのが切っ掛けだった。止めてみるとこれが楽だ。シャワーを浴びた後にタオルで頭をわしわし拭いたら、ドライヤーもかけずちょっとブラシで毛を整えてそれで終わり。後は勝手に乾いてくれればなんとなくそれらしい頭になっている。そもそもちゃちゃっと右左に分けてるだけのヘアスタイルと言えるようなヘアスタイルでもなかったのでそれで十分なのである。オレはもともと風呂嫌いでシャワーもあまり浴びたくないクチなのだが(一応毎日はシャワってるが)、それは頭を乾かす過程が面倒臭い、というのがあった。しかしこれでシャワーを浴びる敷居が一つ低くなった。今後もこれで行きたい。
歯に関しては、この間激しい歯痛に悩まされ、歯医者に行って奥歯を一本抜くことになってしまったということである。虫歯ではなく、歯周病で歯がグラグラしていたのだ。歯はきちんと磨いていた筈ではあるが、多分煙草と酒のせいだろう。整髪料を止めて喜んでいる暇があったら煙草と酒を止めろという話ではあるがこれがなかなか止められない。そしてこの有様である。これでオレの歯は計5本無くなった事になる。歯の無くなってしまった箇所は今まで部分入れ歯を作ってそれを使用していたのだが、また新たに入れ歯を作らねばならない。定年も近いというのにつまらない出費がまた増えることになる。本人の責任とは言え、なかなかに世知辛い。
さて不愉快な話で申し訳ないのだが、最近足が臭かった(今は無い)。もともとはそんなことがなかったのだが、急にである。風呂嫌いとは書いたが、特に足はいつも念入りに洗っていたはずだ。これはどうも歯痛だった時期と重なっており、痛みのストレスが足部にも余計な汗をかかせたからではないかと推測している。いわゆる「厭な汗をかく」というヤツである。その汗が雑菌の繁殖を促してしまったのだろう。なぜそう思うのかと言うと、歯の治療を終えたあたりから臭うことがなくなったからだ。
とまあ、「毛も無く歯も無く足が臭い」という、汚らしい老人の汚らしい話であった。しょーもなくつまらない何の意味もなく何の教訓もない話で大変申し訳ない。これを反省して今後のブログでは「QOLを爆上げする特殊便座使用法」とか「年寄りの喜ぶ美味しい落雁の店10選」とか「まだ知らない!?サイコロで決める確実投資」など”とてもはてなブログらしい記事”をバリバリと上げてゆく所存である(しねえよ)。