ハゲに前髪は存在するのか

オレの同僚に【う】という男がいる。彼は古くからオレの日記に登場しているので知っている方もおられるかと思うが、神輿担ぎで鍛えた肉体と密教僧の如きハゲ頭を持ち、そのいつもぬらぬらと淫靡に輝く頭頂部から「あぶらぼうず」「破戒僧」というニックネームをほしいままにしている男なのである。その相貌はお笑いユニット・キュートンのブリーフ一丁で踊ってるヤツをもっと凶悪にした感じだと思って頂いて差し支えない。
さてその【う】なのだが、いつもオレの日記を読んでもらっているようで、先日書いた「前髪パッチン」の件に激しく反応してきたのである。ハゲ頭だけに髪の話題には敏感この上ないのらしい。

【う】「読みましたよ日記。なんですか前髪パッチンって。そっちには随分ナンパな男がいるんですねえ」

実はオレと【う】は東京と横浜の別事務所で、この会話も電話で成されたものなのであるが、先日話題になった I 君のことはおぼろげにしか記憶にないのらしい。
オレ「そうだ。これからのワカモノはスダレ&パッチン。これを乗り越えられないオレとお前は既に先史時代の生き物なのだ。というか既に毛髪の存在しないお前にはガチで無理と決まっているがな」
【う】「相変わらず失礼だなー!オレにだって前髪はありますよ!だいたいこの頭剃ってるだけですよ!」
オレ「剃ってようが抜けていようがハゲはハゲ!ハゲに前髪も後ろ髪もあるものか!」
【う】「ありますってば!0.1ミリでも生えていればそれは前髪ですよ!」
オレ「いやちょっと待て。たとえそれが剃髪だとしても、そんなつるつる頭に前後の区別を付けねばならぬ道理はないわ!あったとしてもそれは前も後ろも無い、単なる"全体"だわ!」
【う】「違いますよ!毛が抜けて後頭部まで髪が後退した人は前髪が後頭部にあることになるじゃないですか!」
オレ「ハゲの前髪とは語義矛盾ではないのか!?」
【う】「前髪と後ろ髪と限りなくニアミスしている、それがハゲなんですよ」
オレ「ううむ、後ろにあっても前髪とはこれいかに!」
【う】「でも俺は剃ってるわけだから見えて無くても前髪はちゃんと額の上にあるってことじゃないですか」
オレ「確かにそうかも知れないがオレは納得できないぞ」
【う】「理屈は合ってるでしょ」
オレ「なんだか騙されているような気分だ」
【う】「だから俺には前髪あることを認めて下さいよ」
オレ「ううむ分かったオレの負けだ」
う】「で、この前髪にパッチンをしてですね…」
オレ「それは無理だっつーの!」
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