最近読んだコミックなどなど(その1)

プリニウス(12・完)/ ヤマザキマリとり・みき

プリニウス』遂に最終巻。主人公ガイウス・プリニウス・セクンドゥスについてはコミック刊行時ざっと調べてはいたし、最後の舞台がヴェスヴィオ火山の鳴動するポンペイということで、クライマックスの展開は予め予感できていたものの、実際こうしてコミックとして描かれるとそのカタストロフとスペクタクルの様子、さらに著者二人が注ぎ込んだエモーションは想像以上のものだった。というわけで完結した『プリニウス』だが、作品自体はプリニウスの個人史的な物語というより「プリニウスのいた時代のローマとその周辺地域」の空気感、その時代性を、即ちその時代の先端国家ローマを、真空パックしたかの如く活写したものとして完成していたな、と感じた。そういった部分で物語としてのカタルシスには乏しかったものの、著者二人の切り口によって表出する「ローマ世界」を巨大な箱庭の如く堪能できた作品であった。

#DRCL midnight children(3)/ 坂本眞一

坂本眞一がブラム・ストーカーの『ドラキュラ』に自由な脚色を加えて描く吸血鬼物語第3巻。寄宿舎の美少年集団+赤毛そばかすのニンジン娘という主要人物設定も相当だがなにより魔人ドラキュラがどう見たってマイケル・ジャクソンというかっ飛ばしっぷりにもはや唖然呆然、おまけに真打登場!と思わせたヘルシング教授があんなことに、って、それってどうなのォオォオォオ~~ッ!?加えて坂本ならではの超絶グラフィックで描かれた醜怪なホラー描写と、頭の螺子が全部緩んでしまってるんじゃないかと思わされる超お耽美ファンタジック描写が波状攻撃で襲ってきて、そこは既にほらご覧よ坂本ワールド。もはや他の追従を許さない、というか追従する人間自体があまりいなさそうなゴージャスでマーベラスでグラマラスなドラキュラ・ストーリー、いろんな意味でこれに圧倒されない人間はいないはず。

戦車椅子-TANK CHAIR-(1)~(3)/ やしろ学

殺伐としたサイバーパンク世界を舞台に、脳に損傷を受け車椅子で植物状態の殺し屋が、殺意を向けられた時だけ覚醒する!?というバイオレンス・バトルアクション・コミックである。初見でグラフィックが気に入ったのでまとめ読みしてみた。車椅子とはいえ覚醒すると強力な戦闘形態車椅子に変身(?)するのでハンディキャップは存在しないに等しく、殺意を感じれば感じるほど無敵になるので強さはうなぎのぼり、それに比例して敵もどんどんインフレを起こし、いざ戦いともなると凄まじい破壊と血飛沫が紙面を覆い尽くす、といった内容。まあ昨今の徹底的に荒唐無稽なスプラッタ・バトルアクションの流れにある作品なんだろうが、こうした地に足の着いた現実など一切存在しない世界観のコミックってオレはあまり読んだことが無いのでそこそこ新鮮だった。続きが出たら読んでもいいな。