雨と君と(7) / 二階堂幸
孤独を愛する小説家女史と雨の日に拾われた犬……と自称するタヌキとの平穏な日々を描くコミック第7巻。なにしろ淡々としたお話で、事件らしい事件が起こるわけでもなく誰かが感情をあからさまにするわけでもなく、ただ主人公とタヌキのささやかなやりとり、主人公と友人たちとの気の置けない交流が描かれるだけの作品だ。そしてそこがいい。そもそも愛情や信頼というのはこんな何気ないものなのだろう。こんな静かな物語ではあるが人気が高く、やはり物語の平穏さを愛するファンが多いということなのだろう。2025年にはアニメ化もされるというから驚いたが、タヌキブームとかも来ちゃうのだろうか。あんまりブームとかなっちゃうとタヌキ好きとしてはちょっと困っちゃうな……。
スーパーボールガールズ(1~4)/金城宗幸 (著), 平本アキラ (著)
しがないチョコレート工場で働く青年がある日奇妙なスーパーボールを拾い、それを投げたところ美少女たちがポンポン現れてハーレム状態!?という一見よくあるセクシー系青年願望充足物語のように始まるが、その後にとんでもない展開が待っていて驚かされた。この美少女たちというは美少女の形をした謎の生物で、高い身体能力と自己再生能力を持ち、さらに種の拡大を目論む美少女連合が人間を殺戮し始め、それを阻む主人公側の美少女連合とで酸鼻を極める凄まじい戦闘が始まってしまうのだ。いわばエロティックな美少女をメインとしながら『寄生獣』を彷彿させる熾烈なSF作品として完成しているのだ。グラフィック担当の平本アキラは素晴らしい画力を持つ漫画家だが最近作話に行き詰っており、そこに人気原作者・金城宗幸の原作を持ち込むことで再ブレイクを果たしたとも言えるだろう。この組み合わせはなかなかナイスだと思う。
戦車椅子‐TANK CHAIR‐ (7) / やしろ学
やしろ学の『戦車椅子-TANK CHAIR-』はディストピア化した近未来を舞台に超常的なパワーを持ち武装車椅子に乗った殺し屋青年が主人公の物語だ。荒唐無稽ではあるが非常にユニークな設定で、ウルトラバイオレンス描写と強烈な情感で読ませてゆくのだ。なによりサイバーパンク的であると同時に十分にポップなグラフィックデザインが抜きんでている。この7巻ではなにやら怪しい集団が新たに登場し主人公と仲間たちの前に立ちはだかる。今後も楽しみだ。
タワーダンジョン (3) / 弐瓶勉
弐瓶勉の『タワーダンジョン』は非常にオーソドクスな中世風ファンタジー世界を舞台としながら、残虐かつ陰惨、醜怪で不気味な展開でグイグイと読ませてゆく。かといって暗く重たいものにならないのは作者ならではの風通しの良い流麗なグラフィックがあったればこそだろう。主人公が強力なヒーローというのではなく、力自慢だがちょっぴり呑気な村の青年というのもいい。弐瓶勉のコミックを読むのはこれが初めてだが、他の作品も読んでみたいなあ。
還暦子育て日記12 サトルのぶらり途中下車の旅の巻 / 渡辺電機(株)
55歳独身漫画家が二人の子持ちのシングルマザーと結婚することになり、連れ子の娘たちと手探りで心を通わせてゆく実録コミック『父娘ぐらし』は本当に素晴らしい作品だった。この『還暦子育て日記』は『父娘ぐらし』のその後を描く作品で、NOTEで公開されている分とXで公開されている一コマ絵日記をまとめたものとなり、Amazon Kindleで読むことができる。『父娘ぐらし』からずっと付き合って読んできたが、月日の経つのは早いもの、子供たちはどんどんと大きくなり、気苦労の仕方もどんどんと変わってくる。そしてそれを眺めながら、作者と同じ強い感慨を覚えてしまう自分がいるのだ。