最近観たDVDとかサブスクとか

アンモナイトの目覚め (監督:フランシス・リー 2020年イギリス映画)

映画『アンモナイトの目覚め』は二人の女の孤独と愛とを描いた作品だ。ケイト・ウィンスレットシアーシャ・ローナン主演。舞台は19世紀イギリスの海辺の村、人間嫌いの古生物学者メアリーの元に鬱病を患う令夫人シャーロットが預けられる。最初はギスギスした関係の二人だったが、熱病に罹ったシャーロットをメアリーが献身的に介護したことから深い友情が、後に愛情が育まれることになる。物語は実在の古生物学者メアリー・アニングスと地質学者シャーロット・マーチンソンを題材にし、自由な映画的脚色を加えている。

物語の根幹となるのは男性社会から疎外された女性たちの孤独だ。素晴らしい功績をあげながら男性社会である学術会から爪弾きにされ貧困の中で生きるメアリー、学者である夫のもと自らを押し殺して生き、鬱病を病んでしまったシャーロット。二人の間に目覚める愛情とは、この二人がこれまでいかに疎外され孤独に生きてきたかを物語るものであり、その孤独の在り方を同じように知るものだからこそ、二人の愛は激しく切ないものとなったのだ。そして愛の持つ「かけがえのなさ」とは、そもそもそのような中で生まれるものなのだろうと思う。主演となるケイト・ウィンスレットシアーシャ・ローナンともども素晴らしい存在感を醸し出しており、とても優れた作品に仕上がっていた。

秘密の森の、その向こう(監督 セリーヌ・シアマ 2021年フランス映画)

フランス映画『秘密の森の、その向こう』は、亡くなった祖母が住んでいた森の中の一軒家に訪れた少女が、その森の奥で不思議な体験をする……という物語だ。いわゆるファンタジーでありSFでもあるが、長年SFを読んできたオレですら感服した奇跡のように美しく心奪われる物語として完成していた。謎めいているのと同時に観ている自分自身も子供の時分に戻ったかのように奇妙に心安らぐものを覚えさすのだ。

「不思議な体験」がどういうものなのかは書かないが、子供だからこその現実と非現実が重なった夢想が生み出した、夢幻的な物語だと言えるだろう。その夢想は、祖母の死や父と別居して家を出た母といった家庭問題で心に傷を負った主人公少女が、それを払拭しようと無意識の中に生まれたものなのだろう。その夢想の中で少女は心の中の混乱を整理し、前向きな明日を手に入れようとする。これはそういった、救いであり願いである物語なのだ。

燃ゆる女の肖像 (監督:セリーヌ・シアマ 2019年フランス映画)

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『秘密の森の、その向こう』が面白かったので、同監督の話題作『燃ゆる女の肖像』も観てみた。そしてこれがまた非常に優れた、心に残る物語だった。凛とした佇まいの主人公、シンプルでありながら美しく力強い映像にまず見入ってしまった。舞台は18世紀フランス、主人公マリアンヌはある娘の結婚用の肖像画制作を依頼されるが、その娘アロイーズは結婚を望んでいなかった。最初は画家であることを隠しこっそりアロイーズの肖像画を描いていたマリアンヌだったが、完成した絵を見たアロイーズは「これは私じゃない」と突っぱね、「もっときちんと私を描いて」と要求する。

その後マリアンヌとアロイーズは次第に打ち解け合い深い愛すら生まれるが、そうして出来上がった絵はアロイーズそのものであった。これは、最初の絵がアロイーズの「外側」だけを描いたものであったのに対し、後に描かれた絵はアロイーズの「内面」を映し出した絵だったからだ。すなわち、アロイーズの「私の容姿ではなく内面を見てほしい、私が誰で何者なのかを知って欲しい」という懇願の結果に他ならない。ただ「家」のために結婚を余儀なくされるアロイーズの、「私の事を知って、そして愛して欲しい」という悲痛な願い、それがこの「絵を描く」という事の中に込められていたのだ。