THE SWARM/ザ・スウォーム(Huluオリジナルドラマ)
エミー賞受賞「ゲーム・オブ・スローンズ」のプロデューサーが贈る超大型国際ドラマが登場!クジラやシャチが突如人間を襲い、ロブスターによる謎の感染症が蔓延―。世界中の海で起こる異変の原因とは…。宇宙より謎が多いと言われる深海で一体何が起こっているのか!?ヨーロッパ最大級の水中スタジオで撮影された圧巻の映像美と精巧かつ大掛かりなVFXから目が離せない!木村拓哉ら世界各国の豪華俳優陣が終結した《深海SFサスペンス》が遂に日本上陸!
破格のHuluオリジナルドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』
それは何の前触れもなく突然起こった。クジラが、シャチが人間を襲い、強毒性のウィルスを持つ甲殻類が水源を汚染し、猛毒のクラゲが水辺を覆い尽くした。深海では新種の生物がメタンハイドレートを掘り起こし海難事故を誘発させる。さらに巨大津波、海岸線の滑落が巻き起こり、多くの人命が奪われていった。この異常事態に世界中の科学者たちが研究を開始する。そして海で、何か謎めいたことが進行していることが判明するのだ。それはいったい何か?そして人類に何をもたらそうとしているのか?
フランク・シェッツィングによる世界的大ベストセラー小説『深海のYrr』を原作とし、製作総指揮に『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズのフランク・ドルジャーを迎え、ヨーロッパ製作のTVドラマシリーズ最高の製作費を費やして、各国の名俳優を集め世界各地でのロケを敢行、Huluオリジナルドラマとして破格の作品として仕上がった深海SFパニックドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』(全8話)である。また、日本から木村拓哉が出演していることも話題だろう。
主演は『ラスト・リベンジ』のアレクサンダー・カリム、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ・カンザス・イヴニング・サン別冊』のセシル・ドゥ・フランス、『白いリボン』のレオニー・ベネシュ、『ワイルドフッド』のジョシュア・オジック、『ハンナ・アーレント』のバルバラ・スコヴァ、『DUNE/デューン砂の惑星』のシャロン・ダンカン=ブルースター。監督に『バーバリアンズ-若き野望の目覚め』のバーバラ・イーダーと『リッパー・ストリート』のルーク・ワトソン。
人類を襲う海の異変
このドラマ、なにしろスケールが大きい!物語はスコットランド、フランス、カナダ、イタリア、日本、遂には北極圏へ、世界中を股にかけて進行する。それらの幾つかでは海岸線が舞台となり、風光明媚な、あるいは荒々しい、美しい自然の風景が映し出されることになる。さらに海上、海中もまた舞台となり、潜水艇による深海の光景をも描き出される。神秘的であると同時に危険に満ちた海、こういったビジュアルがまず素晴らしい。
それらロケーションのそれぞれに登場人物がおり、それぞれが「海の異変」を目撃し、あるいは事件に巻き込まれてゆく。最初単なる「海の異変」であったものが、次第に多くの人命を脅かしてゆき、さらにパンデミックへ、巨大災害へと膨れ上がって、膨大な被害と死者を出してゆく。そして遂に、人類滅亡の危機へとなだれ込んでゆくのだ。そう、ドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』は、深海のサスペンスだけにとどまらない、恐るべきディザスターストーリーなのだ。
これらは最初、断片的なエピソードとして1話毎に語られてゆき、それが次第に積み重なって、最終的に一つにまとめ合わさった時に、「ある驚愕の事実」が浮かび上がってくる、という非常に立体的な構成となっている。その「ある驚愕の事実」とは何か、ネタバレしない程度に書くなら、それは「海の人類への反逆」である。その「反逆」が、なぜ、どういった形で、どういった「意志」により起こったのか?その「意志」とは何なのか?それが今作の核心であり、登場人物たちが決死の探索を続けるものなのだ。
カタストロフに果敢に立ち向かってゆく人々の物語
こういった物語運びは、「海洋汚染」を中心とした環境問題を扱ったものとして今日的であると同時に、世界同時に得体の知れない惨禍が巻き起こり、じわじわと人類を苦しめながら強大なパニックとカタストロフを起こしてゆく、という部分においては昨今のCovid-19によるパンデミックをも連想させる。そしてそれに対し大勢の人間たちが果敢に立ち向かってゆくという部分すらもこのパンデミックそのものだ。
オレは随分前に原作を読んでいたが、凄まじい災厄と破滅に満ち溢れ、夥しいまでの死が描かれた原作と比べるなら、TVドラマ版の描写はまだまだ大人しく、またあれだけのスケールで描かれながら、それでも原作よりも小ぶりなスケール感であったとは思えたが、1シーズン全8話でこれだけシンプルにスマートに描き切った部分に、逆に好感を覚えた。原作では登場人物ももっと悪辣な人物が登場していたが、科学者たちの尽力する様を中心に構成されたTVドラマ版の人間関係はある意味清々しく感じた。そういった部分で、原作とはまた違った面白さがあり、そして十分に楽しめる優れたドラマだということができるだろう。
(参考:以前ブログに書いた原作小説の感想)