THE MONKY/ザ・モンキー (監督:オズグッド・パーキンス 2025年アメリカ映画)

おもちゃの猿がドラムを叩くと人が死ぬ。それも、とびきり残虐な方法で。映画『THE MONKEY / ザ・モンキー』は、そんな不気味で理不尽な運命を描くホラー作品だ。
原作はホラー小説の帝王スティーヴン・キングの短編「猿とシンバル」。監督は『ロングレッグス』のオズグッド・パーキンス、製作にはジェームズ・ワンが名を連ねる。主演のテオ・ジェームズに加え、タチアナ・マズラニー、イライジャ・ウッドら実力派が脇を固めている。
物語の始まりは、双子の少年ハルとビルが亡き父の遺品の中から、ぜんまい式の猿のおもちゃを見つけたことだった。何気なくぜんまいを巻いた直後から、二人の周囲で凄惨な死が連鎖し始める。恐怖に駆られた二人は猿を切り刻んで捨てるが、それはいつの間にか元通りになって傍らに佇んでいる。やがて二人は猿を井戸の底に封印し、平穏を取り戻したかに見えた。しかし25年後、あの猿が再び姿を現したことで、理不尽な死の輪舞曲(ロンド)が再び幕を開ける。
私はそれほどホラー映画ファンというわけではない。しかし、本作は今年観たホラーの中でも「白眉」であると感じた。それは、単なる残酷描写の妙ではなく、本作が「アレゴリー(寓話)」として一歩抜きん出ているからだ。
ここで描かれるのは、猿がドラムを叩くことによって引き起こされる「唐突な死」である。猿が何者で、どこから来たのかは一切語られない。「ある種の呪い」と解釈することは容易だが、その背景や理由は徹底して伏せられている。とにかく、ドラムが鳴れば人が死ぬ。理由はなく、止める術もなく、その存在を排除することも叶わない。
この猿は、死神なのだろうか。いや、おそらくそうではない。この猿は「死」そのもののアレゴリーなのだ。
猿がドラムを叩くと人が死ぬ。しかし、よく考えてみてほしい。猿がドラムを叩かなかったとしても、人は死ぬのだ。病魔に侵され緩慢な死を迎えることもあれば、不慮の事故で命を落とすこともある。いずれにせよ、いつ、どのような理由であろうと、人は必ず死ぬ。
本作において死が「猿」のせいに思えるのは、それが唐突で、理不尽で、残虐だからだ。だが、猿が井戸に封印されていた25年間、この世界で死ぬ者は一人もいなかったのか。そんなはずはない。
「猿がドラムを叩く」という事象と「その直後の死」が重なるとき、私たちはそこに因果関係を見出し、それを「邪悪な呪い」と呼ぶ。しかし、呪いとは何だろうか。それは単なる「偶然の蓄積」であり、人間の「認知の歪み」が生み出した幻想ではないか。
もちろん、映画は因果関係を匂わせることでホラーとしての娯楽性を成立させている。観客はその理不尽さに戦慄するだろう。だが、そもそも死の本質とは理不尽なものであり、究極的には理由などないのだ。
本作は、死が持つ「無味乾燥で無情な感触」を、猿のおもちゃという形を借りて具体化した作品といえる。観客は凄惨な死の連鎖を目の当たりにしながら、最後には恐怖や不安を超えて、「死とは本来こういうものなのだ」という諦念にも似た感覚を覚える。この、突き放したようなドライな死生観、そしてその果てのナンセンスさこそが、本作を唯一無二の作品にしているのだ。
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