SOMPO美術館『印象派からエコール・ド・パリへ スイス プチ・パレ美術館展』を観に行った

印象派からエコール・ド・パリへ  スイス プチ・パレ美術館展

この間の3連休初日は新宿にある「SOMPO美術館」に『印象派からエコール・ド・パリへ  スイス プチ・パレ美術館展』を観に行っていました。SOMPO美術館はあのゴッホの名作『ひまわり』を所蔵している事でも有名な美術館でしょう。このSOMPO美術館、大昔に一回だけ行ったことがあるのですが(確かポップアート展でした)、その時もこの「ひまわり」を観て圧倒された記憶があります。

今回の展覧会でコレクションを披露するプチ・パレ美術館はスイス・ジュネーヴにあり、19世紀後半から20世紀前半のフランス近代絵画を中心として収蔵しています。実は1998年から現在まで休館中なのだそうですが、今回は約30年ぶりに日本でのコレクション展となりました。

《展覧会概要》世紀転換期のパリでは、多くの画家たちが実験的な表現方法を探究し、さまざまな美術運動が展開されました。プチ・パレ美術館の特徴は、ルノワールユトリロなどの著名な画家たちに加え、才能がありながらも、あまり世に知られていなかった画家たちの作品も数多く収蔵していることです。本展では、この多彩なコレクションから38名の画家による油彩画65点を展示し、印象派からエコール・ド・パリに至るフランス近代絵画の流れをご紹介します。

【スイス プチ・パレ美術館展】 | SOMPO美術館

展示では19世紀後半の印象派、新印象派から始まり、ナビ派とポン=タヴァン派を経て20世紀初頭のフォーヴィズムキュビスムへと繋がっていきます。またそれらの芸術運動とは距離を置いたポスト印象派、エコール・ド・パリの作品を展示することにより、フランス近代絵画の重要な芸術運動をすべて網羅する形となっています。今回の展覧会ではそれらの流れが非常に分かり易く展示されており、優れた展覧会であったと感じました。

そしてフランス近代絵画が中心という事からか、やはりとても美しく、そして「美」にこだわった作品が並んでいました。どの作品も明るい色彩と豊かな抒情に溢れ、生きることを愛しそれを謳歌するかのような作品ばかりでした。そういった部分でも実に充実した展覧会だったと言えるでしょう。キレッキレの前衛作品ばかりが並ぶ美術展も好きですが、こういった観ていて心がほっとするような美術展もまたいいものです。これもまた絵画を見る喜びのひとつですね。では例によって気に入った作品を展覧会のテーマに沿いながら紹介してみようと思います。

第1章 印象派

《詩人アリス・ヴァリエール=メルツバッハの肖像》 ピエール・オーギュスト・ルノワール

この展覧会では「フランス近代絵画が印象派を発端としてどのように変遷していったか」を作品を通して提示してゆきます。まずはその印象派、作品は少なかったのですが、やはりこのルノワールの作品は貫録を感じさせましたね。

第2章 新印象派

《遠出する人》アンリ=エドモン・クロス

《ファン・デ・フェルデ夫人と子どもたち》テオ・ファン・レイセルベルヘ

印象派は、スーラの絵画で有名な点描表現を使った作品が並びます。細かな点としてカンバスに置かれた色彩が隣り合う別の色彩と相補する形で新たな色彩を表出させるのです。これらは印象派絵画の持つ色彩と光線の扱い方をさらに検証し、より科学的に計算することで成り立つ芸術運動なんです。

第3章 ナビ派とポン=タヴァン派

《ペロス=ギレックの海水浴》 モーリス・ドニ

《休暇中の宿題》モーリス・ドニ

ナビ派とポン=タヴァン派、初めて知った芸術運動の名前だったのですが、ポン=タヴァン派は伝統的な絵画表現や印象派から距離をとり、より平面的で内面的な絵画を目指したものだそうです。その流れにあるナビ派は、さらに装飾的な表現を追求した作品を生み出しました。

第4章 新印象派からフォーヴィズムまで

《室内の裸婦》アンリ・マンギャン

ナポリ若い女》シャルル・カモワン

点描を追求した新印象派の画家たちはそこからさらに自由な表現方法を追い求め、フォーヴィズムへと行き着きます。大胆なタッチと鮮やかな色彩が中心となったこれらの絵画運動は短期間のものでしたが、その後のキュビスムへと繋がってゆくのです。

第5章 フォーヴィズムからキュビスムまで

スフィンクス》ジャン・メッツァンジェ

《ワトーへのオマージュ》アンドレ・ロート

印象派~新印象派フォーヴィズムを経て、画家たちの関心は色彩よりも空間と質感の表現へと移ってゆきます。ピカソはそこで《アヴィニョンの娘たち》で有名なキュビスムを生み出し、多くの画家たちがそれに影響されてゆきます。キュビスムはモチーフの形態を多くの面に分割・解体し、それを再統合させた表現方法で、後期ではモチーフと周囲の空間すら融合してゆくことになります。

第6章 ポスト印象派とエコール・ド・パリ

《ノートル=ダム》モーリス・ユトリロ

コントラバスを弾く女》シュザンヌ・ヴァラドン

こういった多様な展開を見せた芸術運動の傍らで、それらに影響されることなく距離を置いた画家たちもいました。この画家たちを総称してエコール・ド・パリと呼ぶのだそうです。

ヴィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》

《ひまわり》フィンセント・ファン・ゴッホ

さてここまでの展覧会作品とは別に、SOMPO美術館では所蔵作品の展示・常設も行っています。東郷青児ルノワールの諸作品もそうですが、やはり何と言ってもゴッホの《ひまわり》でしょう。この《ひまわり》は今年から撮影可となっており、オレもいそいそと写真を撮ってきました。それにしてもやはりホンモノは鬼気迫る迫力があります。カンバスに乗った絵の具がまるで生き物のような生々しさを持ち、そこで息衝いてさえいるかのように感じさせるゴッホの作品は、ある種不気味な存在感を醸し出し、「絵画」というもののひとつの到達点であると同時に、唯一無二の作品であると言っていいでしょう。