プリンス未発表アルバム『ウェルカム2アメリカ』がリリースされた

ウェルカム2アメリカ/プリンス

ウェルカム・2・アメリカ (完全生産限定盤/デラックス・エディション) (CD+Blu-Ray) (ライヴ映像付2枚組) (特典なし)

プリンス未発表アルバム『ウェルカム2アメリカ』

2016年に急逝したプリンスの、なんと未発表アルバムが発売である。プリンスの死後、未発表曲のコンパイル・アルバムや、既発アルバムのデラックス版などは発売されていたが、まるまる1枚未発表のアルバムとなるとこれは話が別である。タイトルは『ウェルカム2アメリカ』、2010年にレコーディングされたままお蔵入りになっていたものだという。

2010年というとアルバム『ロータス・フラワー/MPLサウンド』(09)、『20TEN』(10)がリリースされた後であり、『アート・オフィシャル・エイジ』(14)、『プレクトラムエレクトラム』(04)がリリースされる以前という事になる。また、その後に『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』(15)『同 フェーズ・ツー』(15)という生前最後のアルバムがリリースされたことを考えると、これはプリンス後期のアルバムとして位置づけられるものだろう。そしてこれはプリンスの45枚目のオリジナル・アルバムでもある。

ロータス・フラワー/MPLサウンド』と『20TEN』における特殊なリリース形態(通販と雑誌付録)は音楽ビジネスに対するプリンスの批判と態度を示したものだが、それが気分的に一段落着いたのだろう、『ウェルカム2アメリカ』には上記2アルバムとは違う落ち着きと真摯なメッセージ性を感じる。ミディアム・テンポで和やかな曲が多く、殿下得意の轟音ファンクや絶叫ロックの片鱗は余り感じない。また、コーラスとの合唱が多く、殿下がピンで歌う曲にも強烈な自己表示は感じない。殿下が引いてる、というよりもセッションを楽しんでいる、といった感じだ。

アレンジも素朴であっさりしたもので、案外一発撮りだったり作りこんだりせずに素材のまま使っているのかもしれない。そういった部分で、この前後のアルバムと比べるならおとなしめであるし、強烈なアピールのないアルバムということもでき、お蔵入りはその辺りが理由のような気もする。つまり、地味なのだ。とはいえそこはプリンス、楽曲の完成度は当然高く、強烈なポイントのない分、実は何度繰り返して聞いても旨味がある、和める作品となってる。

そういった部分で、必聴の1作!とまでは言わないけれども、プリンス・ファンなら当然聴くであろう作品だし、同時に愛着を感じるアルバムだと思う。しかしそれにしても、アルバムジャケットにしても収録のブックレットにしても見たことのない写真ばかりで、「よくもまあこれだけ残っているものだな」と感心してしまった。

至高の『ウェルカム2アメリカ・ツアー』ライブ映像

さてこの『ウェルカム2アメリカ』、CD1枚の普通盤とは別にCD+Blu-ray同梱のデラックス・エディションがあるのだが、このBlu-rayがとてつもなく素晴らしいのだ。内容は2011年の『ウェルカム2アメリカ・ツアー』における、カリフォルニアでの公演を収録したもの。これがもう超絶的に激カッコイイのだ!

1曲目からただならぬ緊張感と優美さを湛えながら歌い演奏する殿下の姿、その殿下を支える鉄壁のコーラス隊と演奏陣、シンプルかつモダンなステージ構成、初っ端から延々と続くクライマックス、絶え間なく続くコールアンドレスポンス、これもうプリンスが観客を殺しに(昇天させに)かかってるとしか言いようがない。双子のダンサーの踊りがまたヤヴァイ。これらがパキパキのblu-ray映像で収録されているのだが、もうなんだかとんでもないものを見せられている気分だ。オレが今まで観たプリンスライブ映像の中でも最高の部類に入るぞこれは。

ステージはアリーナの中央に設えられた例の「シンボルマーク」の形をしており、客席はそれを取り巻く形となっている。演出的には難しそうだが、しかしこの変則的なステージ形状により、誤魔化しや目くらましのない、真に実力のあるパフォーマンスを発揮しているのだ。

演奏は途中からコーラス隊の皆さんによるソウルバラード展開になってやっと人心地付くのだが、コーラス隊の皆さんの歌がまたパワフル。そして中盤、レッツゴー・クレイジー、デリリアス、1999、リトル・レッド・コルベット、パープルレインと、殿下の名曲が乱れ打ちだ。こんな名曲を連打で聴かされると至福のあまり悶死しそうだ。オレは悶死した。ちなみにパープルレインの演奏時間は至福の15分!

そこからなだれこむ後半は観客をステージに上げての大ダンス大会!カヴァー曲を織り交ぜながら執拗に観客を挑発しまくる殿下の姿に会場はもう興奮の坩堝だ。最終曲はロック史に燦然と輝くロキシー・ミュージックの名盤『アヴァロン』から「モア・ザン・ディス」。「これ以上のものは無い」というその歌詞は殿下と観客が一体となったライブの至上のひとときを言い表してもいるのだろう。これはもう必見、アルバム『ウェルカム2アメリカ』はこのライヴ映像を観るためだけにも購入すべきだろう。

《収録内容》

[CD]

Welcome 2 America (5:23)

Running Game (Son Of A Slave Master) (4:05)

Born 2 Die (5:03)

1000 Light Years From Here (5:46)

Hot Summer (3:32)

Stand Up And B Strong (5:18)

Check The Record (3:28)

Same Page Different Book (4:41)

When She Comes (4:46)

1010 (Rin Tin Tin) (4:42)

Yes (2:56)

One Day We Will All B Free (4:41)

 

[Blu-ray]

Joy In Repetition

Brown Skin (India.Arie cover)

17 Days

Shhh

Controversy

Theme From “Which Way Is Up" (Stargard cover)

What Have You Done For Me Lately (Janet Jackson cover)

Partyman

Make You Feel My Love (Bob Dylan cover)

Misty Blue (Eddy Arnold cover)

Let's Go Crazy

Delirious

1999

Little Red Corvette

Purple Rain

The Bird (The Time cover / Prince composition)

Jungle Love (The Time cover / Prince composition)

A Love Bizarre (Sheila E cover / Prince composition)

Kiss

Play That Funky Music (Wild Cherry cover)

Inglewood Swingin' (version of Kool & the Gang's Hollywood Swingin')

Fantastic Voyage (Lakeside cover)

More Than This (Roxy Music cover)