■(老体に鞭打ち)5時間ハシゴしてきたIFFJ
先日12日の祝日はヒューマントラストシネマ渋谷で開催されている「IFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)2015」に行って参りました。
IFFJは「インドと日本で映画の共通プラットフォームを提供することを目的として創設」されたもので、要するに「字幕付きのインド映画ヒット作をみんなで観ようじゃないか!」というフェスティバルなんですな。最近では日本でもインド映画の公開作も増えてきており、ヒット作も生まれていますが、それでも紹介本数はまだまだ微々たるものです。さらに一般のお客さんへの浸透はまだまだみたいで、日本側の興行主もインドでヒットしたからといってホイホイと日本でロードショー公開をしてくれなくて、それでこういったフェスを開くことによりできるだけインド映画の日本公開を増やそうと頑張られているということなんです。いやホント、面白い日本未公開インド映画はまだまだゴマンとあるのですよ!これを観ないなんてもったいない!!
IFFJの趣旨・スケジュールはHPを参照して頂くとして、とりあえず会期は東京が10月9日(金)〜10月23日(金)、そして大阪が10月10日(金)〜10月22日(木)となっております。上映作品や内容などは侍功夫氏による「唄って踊るだけじゃない!インド映画の祭典【IFFJ】観賞ガイド」を読んでいただければガッツリ頭に入るかと思いますので是非お読みになられてください。
さて実を言うと個人的にはフェスで上映されるインド映画作品の殆どは輸入盤のDVDで視聴済みのものばかりで、最初は「まあ、あえて行かなくてもいいかなあ…」とは思ってたんですが(それと限定公開のフェスって苦手なんですよ)、ツイッターのインド映画クラスタの皆さんの盛り上がり方にほだされ、気が付いてみたらチケット発売日に2枚も取っていた…という訳だったんですよ。しかも同日に連続2本!インド映画は長いから2本連続だと約5時間!オレも映画のハシコはしたことが無いわけでは無いんですが、さすがに5時間は未体験の領域であり、さらに50過ぎのヨボヨボのオッサンなんで様々な体調が気にかかること必至ではありました…。最近腰とか悪いし…。しかしそんな弱音を吐いていたらツイッターで「(私は)12時間ぶっ通しでもまだ生きてますので大丈夫ですよw」という檄を飛ばされ、これはもう否が応でも頑張んなきゃならならないじゃないですか!?
という訳でグダグダ言いつつ行って参りましたIFFJ。この日観たのは『銃弾の饗宴-ラームとリーラ』、そして『バン・バン!』。
■銃弾の饗宴-ラームとリーラ (監督:サンジャイ・リーラー・バンサーリー 2013年インド映画)
もうね。この『銃弾の饗宴-ラームとリーラ(以下ラムリーラ)』、もんのすごく思い入れのある作品なんですよ。レビューについては以前ここで書いたんですが(まあ今読むと生硬でつまらない文章です)、「ロミオとジュリエット」の物語をインドの架空の街に置き換えた作品なんです。
なにより、インド映画のことなんてまるで知らない頃に、「インド映画ってちょっと面白そうだから輸入盤DVDでも買って観てみっか」と思って購入した1本だったのですが、この『ラムリーラ』を観て、そのあまりの素晴らしさに「インド映画すごいインド映画何かとんでもないことになっている」と呆然としてしまい、それから今に至るまでひたすらインド映画ばかり観るようになった切っ掛けとなる1作だったんです。まさにオレをインド映画に開眼させた1本、ということが言えるでしょう。
何が凄かったかって、なにしろ、とことん、美しい!!百花繚乱に乱れ咲くディープ・インディアな美術がひたすら素晴らしい!そして衣装を始めとする美術も素晴らしかったんですが、作品内で登場する今まで見たこともなかったインドの祭りの光景に度肝を抜かれた!そこに登場するインドの神々を模した姿に唖然となった!なにしろ、全てが、初めてだったんですよ。もう、なにがなんだか分かんないんですよ。分かんないけど、どこまでも、圧倒されるんですよ。そして、なんだか分かんないのに、ひたすら楽しいんですよ!参照すべき情報の無い頭脳に物凄い量の未知の視覚情報が入ってきて、そこでもう、すっかり思考停止状態になって、そこで映画作品にひれ伏した、という状態でした。これ、洗脳となんら変わらない精神状態でしたね。そう、『ラムリーラ』にオレは、洗脳させられたんですよ!
美術云々と書きましたが、実は真っ先に「ヤラレタ」のは、主演であるランヴィール・シン演じるラームの登場シーン、そこから続く歌と踊りのシーンでした。もはや「有り得ない」としか言いようの無い頭の悪そうな展開に「なんなのこれ!?アホなの!?バカなの!?死ぬの!?」と超高速でツッコミを入れながらそのあまりに馬鹿馬鹿しい楽しさに「ああでも…ステキ…ウフンもうどうにでもして…」と身も心も征服された、というオレだったんですんね…。要するに、「ただキレイなだけの映画ではない、同時に相当アホっぽい」ということなんですね。もうなにしろ、これ(↓)ですよ!?
つまりこの作品は、高い芸術性と高い大衆性、高尚さとバカバカしさ、聖俗と清濁、トラデショナルとポップなチープさ、それらが併記されながら混沌として提示される、というものだったんですよ。そしてこの混沌は、実はインドそのものとも言えるではないですか。
さて観た当時は気付かなかったのですが、ラームとリーラの両家の対立は、「ロミオとジュリエット」におけるモンタギュー家とキャピュレット家の対立を単純に移し替えたものと一見思わされますが、そこで何故タイトルに「銃弾」とあり、両家が凄惨なまでに銃器によって殺し合っているのか、というと、実はあの物語はヒンドゥー/イスラムの対立を抽象的に描こうとしたものだからなんじゃないだろうか、と思わされました。サンジャイ監督は芸術家肌なので現実の問題を生々しくは取り扱いませんが、こういった形で自国内の「抗争」を自作に投射したのではないのでしょうか。
■バン・バン! (監督:シッダールト・アーナンド 2014年インド映画)
もう1作はハリウッド映画『ナイト&デイ』をリメイクしたインド版痛快アクション『バン・バン!』(レビューはこちら)。気軽に観られる作品で、ということで選びましたが、この作品も結構好きな作品です。なにしろ挿入歌「Tu Meri」が素晴らしい!このイントロを聴くだけでオレの頭はほわほわと空に昇ってゆくようです。この曲が流れるダンス・シーンも最高に素敵でかっこよくてロマンチック。さらになんだか「ぷっ」と笑っちゃうようなセンスもあるんです。自分は滅多に映画のサントラを買うほうではないのですが、『ラムリーラ』とこの『バン・バン!』のサントラはとてもお気に入りで、買ってよく聴いてました。
内容はなにしろスパイ・アクションなんですが、そこに「白馬の王子さまみたいな逞しく素敵な男性との出会いを夢見る地味で能天気な女性」という要素をコメディ・タッチで挿入することにより独特のテイストを醸し出してるんです。この"白馬の王子"ラージヴィールをリティク・ローシャンが演じ、"夢見る女性"ハーリーンをカトリーナ・カイフが演じています。ハーリーンはラージヴィールに振り回されながら次第に彼に恋してゆくのですが、物語の視点がハーリーン側にあるために「こんな普通な私にこんなスゴイ男性が!」という胸の高まりを、観客側も共有する形になるのですよ。
いやこれ、女性観客なら問題ないんですが、男のオレですら、段々と「ラージヴィールに…抱・か・れ・た・い」と思わされてしまう所が、なんともややこしいのですよ!?つまりオレはカトリーナになってリティクに抱かれたい、と思ってしまうということなんですよ!?そしてリティク・ローシャンがあまりにイイ男であるがため、「それも悪く無いな…」と頭をよぎってしまうんですよ!?
この作品のリティク・ローシャンの筋肉美、凄いです。ボリウッド俳優は皆筋肉ムキムキな俳優ばかりですが、特にリティクは「写真のパース狂ってねえか」と思わされるような異様に逞しい筋肉しています。もうこんな(↓)なんですよ!?
今回のIFFJ、お客さんの7、8割は女性客だったのですが、映画でリティクが上半身裸になりその筋肉を見せつけるたび、女性客の皆様が「いやんうふん」と身をよじり悶絶する様子が場内から伝わってきて一種独特の体験でしたね。まあそんなこと言ってるオレのほうも実は「いやんうふん」と身をよじり悶絶してましたが!リティクは以前から確かにイイ男俳優だとは思ってましたが、劇場の大きい画面で観るとそのカッコよさがまたひとしおなんですよ!無精髭の浮かぶ顔の毛穴までしげしげと眺めることが出来ますよ!そんな訳で「やっぱり映画はDVDばっかりじゃなく映画館の大きい画面で観るべきだな!」としみじみ思ったオレでありました!