最近観たホラー映画2作:『ストップモーション』『ノスフェラトゥ』

ストップモーション (監督:ロバート・モーガン 2023年イギリス映画)

怪奇なストップモーション・アニメを製作中の主人公が、次第に現実と虚構の区別がつかなくなり遂に恐るべき事態へと発展してゆくという心理ホラー作品。実写映像とストップモーション・アニメ映像が融合している部分が新鮮な作品だ。

全体的に悪夢的な構成が延々と続き、そこに次第に狂気の度合いが増してゆき、遂に血塗れ大爆発となるというホラーだが、ここまで凄惨な展開になるとは思っておらず、あまりのグロさから途中で観るのを止めたくなってしまうほどだった。観たけど。そもそも主人公がなんでこんな気色悪いアニメを作っているのか分からないし、死肉から人形を作らねばならない理由も全く理解できないが、その理由なき悪趣味さがまた不気味なのだ。

主人公が精神を病んでゆく原因に著名なストップモーション・アニメーターだった母親のプレッシャーや、自らの作品を生み出せないストレスが理由付けられているけれども、そんな理由付けよりも、そもそもこの作品自体が狂ってるからなのだと思うと納得ができる。そういった奇妙にバランスの崩れた異様さが全編を覆っていて、映画としての完成度はイビツだが、ホラーとしてはおそろしく独特の作品として仕上がっていた。

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ノスフェラトゥ (監督:ロバート・エガース 2024年アメリカ映画)

1922年のサイレント映画吸血鬼ノスフェラトゥ』に、『ライトハウス』『ノースマン 導かれし復讐者』の鬼才ロバート・エガース監督が独自の視点を取り入れて描いたゴシックロマンス・ホラー作品。ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』とは若干違う展開なのだが、観終わった後に調べたら、そもそも『吸血鬼ノスフェラトゥ』自体がブラム・ストーカー版『ドラキュラ』を非公式に改変して作られた作品であり、そのストーリーを踏襲しているという部分が面白い*1

映画自体はロバート・エガース監督独特の耽美にして頽廃的な美術が炸裂するアーティスティックな作品で、映像の美しさ、その透徹した幻想性には目を見張るものがあるだろう。ただどうしても基本がゴシックロマンス作品であるため、新解釈は盛り込まれていても古色蒼然とした内容であることは否めず、なんだか伝統芸能を見せられているような、有り難みと裏腹の退屈さを感じてしまった。

とはいえそこにウィレム・デフォー演じるオカルト専門教授が登場して空気感が変わる。いわゆる『吸血鬼ドラキュラ』におけるヴァン・ヘルシング的な存在なのだが、ウィレム・デフォーのガチャガチャと癇に障る演技がいい具合に物語を引っ掻き回していて、そこだけ現代的だった。

ノスフェラトゥ

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