アクション、コメディ、ロマンスがバランスよくブレンドされた秀作〜映画『RED リターンズ』

REDリターンズ (監督:ディーン・パリソット 2013年アメリカ映画)


引退した凄腕の元CIAエージェントが活躍する『RED/レッド』の続編だが、オレはこの1作目、あまり面白く観られなかったのだ。実は予告編を観て、ハードでシリアスなアクション映画だと勝手に思い込んでいたのだ。しかし実際に観てみると、アクションはそれなりにあるものの、どちらかというとロマンス要素もあるコミカルな作品で、思い込みと違ったばかりに拍子抜けしてしまったのである。だから1作目が面白くなかったのは、作品の出来不出来というより、オレが接し方を間違ってしまった、という部分が大きいのだろう。そんなわけでこの続編は、もっとリラックスして楽しもうと心掛けてみた。

そうして観てみた『REDリターンズ』、これがもうすこぶる面白い。「ナメてましたどうもすいません」と製作者の皆さんに頭を下げたくなるほど面白い。これはひょっとしてこの暮れに公開された映画のダークホースなのではないかとすら思った。

元凄腕諜報部員たちが繰り出す元凄腕ならではのタフなアクションがまず楽しい。でも皆さん老齢なのでそんなアクションがどことなく心もとないのがコミカルだ。そして彼らのお年を召してさらに盛んなロマンス要素がこの作品に実に豊かな味わいをもたらしている。アクション、コメディ、ロマンス、これらがバランスよく映画の中に配置され、爽快感ととぼけた雰囲気のほどよくブレンドされた快作エンターティメントとして仕上がっているのだ。

ブルース・ウィリスジョン・マルコヴィッチアンソニー・ホプキンスヘレン・ミレンといった出演陣の魅力も忘れてはならない。年寄りならではのカッコよさ、年寄りならではの狡猾さ、年寄りならではのズッコケ具合、そして年寄りとは思えないほどのクールさと色気。これらのキャラクターを絶妙と言っていいほどに演じきっている。これら老齢枠(失礼!)の出演者に加え、脂の乗り切った年代と肉体を見せつけるキャサリン・ゼタ=ジョーンズの匂い立つような妖艶さ、それと対照的なメアリー=ルイーズ・パーカーの快活で健康的な色香と予想を覆す突拍子もない性格、この二人の個性がなお一層作品を小気味いいものにする。

そんな和気藹々としたキャラクターたちと対照的に、ピンッと尖りまくった異色の存在感を醸し出しているのがこの中では最若手であるイ・ビョンホンだ。鍛え上げられた肉体と水も滴る二枚目顔、圧倒的なスピードを見せる剃刀の如き鋭利なアクション、キレッキレの狂気じみた性格、このイ・ビョンホンのキャラクターは、本来ならこういったアクション映画のメインとなるべきものであり、当然この作品でもその魅力を余すところなく発揮している。

ただ、何一つ遜色の無い筈のアクション・スター、イ・ビョンホンが、この作品では単にキツくて余裕がなく、洗練さに欠ける青臭いひよっこに見えてしまうのは、周りを囲む出演陣の、余裕に満ちたいぶし銀の存在感とどうしても比べてしまうからだろう。というより、今回のイ・ビョンホンの役回りというのが、年寄りキャラとの対比を際立たせる為にあったのだろう。そんなイ・ビョンホンがお話が進むにつれ、どんどんコミカルキャラに変身してゆくのが、この映画のもう一つの面白さだ。

この映画を素敵なものに感じたのは、まず一人の年寄りとして、年寄りたちが活躍する様を観るのが痛快だったことが挙げられる。それも人間ドラマではなくフィジカルなアクションとして見られるという部分が楽しかった。それともう一つ素敵だな、と思えたのは、男性キャラ女性キャラそれぞれが、きちんと調和がとれた、性分の合う組み合わせの中で存在し行動しているということだ。

ごく一般的にアクション映画というものは、マッチョな男とマッチョな男がくんずほぐれつ敵対しながらギラギラにマッチョな男の世界を構成し、そこで女は庇護される存在か男並みにマッチョになるしかないのだが、この『REDリターンズ』では男と女が非常に自然に両立しながらお互いを尊重し存在しあっている。だからこそこの映画には華があり匂いがあり生活感があり、猥雑で豊かで明るいのだ。そして男だけが中心の男ばかり出てくる物語がどことなくいびつなものであることを気づかせてくれる。『RED リターンズ』は、女の偉大さを感じさせる物語でもあったのだ。

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