サンドラ・ブロック主演の映画『ザ・ロストシティ』は実に充実したアクション・コメディだったぞ

ザ・ロストシティ (監督:アダム・ニー/アーロン・ニー 2022年アメリカ映画)

ロマンチック・アドベンチャーを得意とする女性作家ロレッタが突如サイコなお金持ちに拉致された!?「君の小説に古代財宝の鍵が記されてるんだよゲヒヒ」とばかりにサイコな金持ちはロレッタと共に大西洋に浮かぶ孤島に飛び立つ!一方、ロレッタの小説にマッチョ男として表紙を飾るアランは、ロレッタを助けるべくその後を追う!しかしそのアラン、単なる脳筋野郎であまり役に立ちそうにない!?果たしてロレッタとアランの運命は!?

アクション・コメディ映画『ザ・ロストシティ』です。大恋愛と大冒険を描くロマンス作家ロレッタですが、実生活では単なる引きこもり、大恋愛にも大冒険にも全く縁のない生活を送っています。一方、伊達男として表紙モデルを務めるアランは、見た目こそ甘いマスクのマッチョですが、実のところトンチンカンな脳筋ボンクラ男です。こんな、現実的にはたいしたことのない男女が、小説そのものの危険な大冒険に放り込まれ、上を下への大騒ぎを繰り広げる、というのがこの作品です。

主演はサンドラ・ブロック。素敵な女優さんですよね。大ブレイク作『スピード』、アカデミー主演女優賞ノミネートの『ゼロ・グラビティ』などでアクションもお手の物ですが、『デンジャラス・ビューティー』シリーズではアクション・コメディも披露し、この『ザ・ロストシティ』の期待も大いに高まります。今作ではプロデュースも務めていてやる気満々、そのせいか本国では大ヒットを記録した作品です。チャニング・テイタムダニエル・ラドクリフブラッド・ピットらの豪華キャストも見逃せません。

物語は『ジャングル・クルーズ』や『アンチャーテッド』のようないわゆる「秘境探検モノ」です。とはいえ、アクションよりもコメディが主体で、主演の二人は望んだわけでもなく危険な秘境を右往左往する羽目になるんです。サンドラ・ブロック演じるロレッタなんて小説キャンペーン会場からそのまま拉致されてきたので、紫ラメのジャンプスーツでジャングルを彷徨う、というトホホな見た目が可笑しいんです。こういった「秘境探検モノ」を男性ではなく女性主体で描いた部分もこの作品の面白みの一つでしょう。

ロレッタを助けるべくやってきた脳筋マン・アランは、彼女を慕ってというよりは、いつもギクシャクした関係であるロレッタに認められたいがために危険に飛び込みます。最初はまるで頼りなかった彼ですが、そのがむしゃらさで次第に敵を撃破してゆくようになるのも見所の一つです。そしてこのアランとロレッタの、ロマンスが生まれそうで生まれない部分もなかなかにニマニマさせられます。二人を執拗に追い詰めるサイコな大富豪フェアファックス(ダニエル・ラドクリフ)は漫画みたいな現実味のないキャラですが、だからこそ物語を必要以上にシリアスにすることなく、きちんとコメディへと収斂させているんですね。

物語展開はとてもフットワークよく軽やかで、コメディとアクションのバランスも絶妙です。もちろん「古代財宝の謎」もきっちりと盛り込まれ、物語への興味を持続させ続けます。キャストはどれもハマリ役で、演じるキャラも強い印象を残します。クスリと笑わせ爽快なアクションも見せる本作は、全ての面において過不足ない十分満足のできる娯楽作であることは間違いありません。なにしろリラックスして観られる部分がよかったですね。これは観なきゃ損ですよ!