ガンパウダー・ミルクシェイク (監督:ナボット・パプシャド 2021年フランス・ドイツ・アメリカ映画)
血に飢えたギャングどもを相手に、いずれ劣らぬ手練れの女たちが大暴れ!というバイオレンス・アクション映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』です。「強い女たちが主人公!」というと最近では『355』という痛快作がありましたが、さてこの作品の出来栄えはいかがでしょうか。主演は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のカレン・ギラン。さらにカーラ・グギーノ、アンジェラ・バセット、ミシェル・ヨー、レナ・ヘディといったタフな女たちが共演を務めます。監督・脚本はイスラエル出身のナボット・パプシャド。
【物語】暗殺組織に所属する凄腕の殺し屋サムは、ターゲットの娘エミリーを匿ったせいで組織を追われ、命を狙われてしまう。次々と送り込まれる刺客たちを蹴散らしながら夜の街を駆け抜けるサムは、かつて殺し屋だった3人の女たちが仕切る図書館に飛び込む。女たちはジェーン・オースティンやバージニア・ウルフの名を冠した武器を手に、激しい戦いへと身を投じていく。
まず特色としてこの作品、誰もが知る幾つものアクション作をパッチワークしたような作りになっています。社会の裏側に強力な殺し屋たちのネットワークが存在する、という世界観は『ジョン・ウィック』でしょう。子供の為に組織を裏切り追われる身となるという物語は『グロリア』を彷彿とさせます。コミック・タッチの映像と血塗れ殺戮劇との融合は『キック・アス』を思わせ、強力な女たちが戦う様は『キル・ビル』そのものと言えるでしょう。
他にもいろいろ思い浮かびますが、なにしろそんな具合に様々なアクション映画コンセプトを総取りしたような作りになっているんですね。とはいえ決して物まねで終わっているだけではなく、この映画ならではのユニークなアイディアが多数盛り込まれ、大いに驚かせてくれます。「両腕ぶらり戦法」や「二人羽織り運転」とか楽しかったなあ!予告編でも観られる「図書館武器庫」なんていうのもよく考えたなあと思わされます。
ただしアクションや殺陣の見せ方は結構ぎこちなく、特に前半はテンポが悪く感じるシーンも散見しました。後半は良いシーンも幾つかありますが、全体的に、ハリウッド・アクションに見慣れていると見劣りするかもしれません。監督自身がアクション慣れしていないとか、良いアクション・コーディネーターを立てられなかったとかいうことでしょうか。とはいえ、それを差し引いても、ポップな美術やコミック・タッチの世界観、個性的な女性陣が大いに暴れ回る爽快さは、この作品を十分に魅力あるものにしています。正直オレは大いに気に入ってますし、とても楽しめた作品でした。