「ジョン・ウィック」シリーズ第4弾『ジョン・ウィック:コンセクエンス』も相変わらず殺して殺して殺しまくっていた!?

ジョン・ウィック:コンセクエンス (監督:チャド・スタエルスキ 2023年アメリカ映画)

ジョン・ウィック」シリーズ第4弾にして最終作(?)

地球最強の殺し屋ジョン・ウィックが世界中を死体の山にしながら流浪の旅を続けるシリーズ第4弾にして多分?最終作?である。オレも公開前から非常に楽しみにしていて、会社の休みを取り初日第1回目をIMAXで観てきたぜ!

シリーズの全体的な物語は、キアヌ演じる引退した殺し屋ジョン・ウィックがとある事件により再び殺戮の荒野に放り込まれ、その後世界中にネットワークを持つ殺し屋ユニオン「主席連合」に命を狙われて様々な刺客を相手に死線を彷徨うというものだ。今作ではその流浪の旅に決着を付けるため最終決戦が行われることとなるのだ。

主演はもちろんキアヌ・リーブス、共演はシリーズでお馴染みのイアン・マクシェーンローレンス・フィッシュバーンに加え、今作では主席連合の高官グラモン侯爵役にビル・スカルスガルド、ジョンを亡き者にすべく送り込まれた刺客ケイン役にドニー・イェン、日本でジョンをかくまうシマヅ役として真田広之が出演している。監督は前3作でメガホンをとったチャド・スタエルスキが続投。

【物語】裏社会の掟を破り粛清の包囲網を逃れたジョン・ウィックは、裏社会の頂点に立つ組織・主席連合から自由になるべく立ちあがる。主席連合の若き高官グラモン侯爵は、これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破し、ジョンの旧友でもある盲目の暗殺者ケインをジョンのもとへ差し向ける。そんな中、ジョンが日本の友人シマヅに協力を求めるため、大阪のコンチネンタルホテルに現れる。

ジョン・ウィック コンセクエンス : 作品情報 - 映画.com

オレと「ジョン・ウィック」シリーズ

実はオレは『ジョン・ウィック』シリーズを1作目から好きだったわけではない。無敵の殺し屋ジョン・ウィックがあまりに無敵過ぎる上にアクションが一本調子に思えて、少々白けながら観ていたクチである。しかしシリーズ3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』があまりにも素晴らしい出来だったので、もう一度全作を観返し「これはやっぱり傑作シリーズじゃないか」と改めて認識したのだ。その辺りの経緯は以前ブログに書いた。

この4作目も全体的な流れはこれまでと殆ど一緒だと言っていい。裏社会を牛耳る主席連合の傲慢さと冷徹さ、ジョンを庇護する者たちとの密命、世界を股に掛けた殲滅戦、延々と続く刺客たちと壮絶なバトル、そしてニヒルで寡黙な男ジョンの強力な殺しの腕前がこれでもかと披露されるのである。ただなにしろこれまでと殆ど一緒なので、この4作目で有終の美を飾ったのは正解かもしれない。

併せて、これはあまり誰も言わないんだが、映し出される様々なロケーションの、スラブ系を思わせる文化や美術が突出して美しく、作品の大きな魅力の一つになっている。この辺り、スラブ系を背景に持つと思われる監督の出自と大きな関りがあるのではないだろうか。

「地球最強の殺し屋」ジョン・ウィック v.s. 「宇宙最強の男」ドニー・イェン!?

さて今作の最大の見所は、「宇宙最強の男」ドニー・イェンの登場だろう。ドニー演じる刺客ケインもまた無敵の強さを誇る殺し屋で、これがジョンといったいどんな戦いを見せるのか?という部分で大いに期待を持たせるのだ。「地球最強の殺し屋」ジョン・ウィック v.s. 「宇宙最強の男」ドニー・イェン(ケインという役名ではなくあくまでドニー・イェンと言ってしまおう)、この頂上対決の勝者はどちらになるのか!?

とはいえこのカード、見せるのが相当に難しいのではないかと思っていた。ジョンとの戦いにおいて「宇宙最強の男」ドニー・イェンが負けてしまうのは、ドニー・イェンという稀代のアクション俳優にとってはありえないことなのだ。しかしドニーが勝ってしまっては物語が成り立たなくなってしまう。では途中でドニーが寝返ってジョンと共闘するのか?となると物語が甘くなってしまう。結局どちらかが勝つか負けるしかないのである。それをどう見せるのか?どう落し所を見つけるのか?という部分で、物語はシリーズ最大の山場を迎えることとなるのである。そしてその戦いの決着は、是非劇場で確認していただきたい!

ただドニーさん演じる殺し屋ケイン、盲人という設定なのだがこれがドニーさん主演映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』とモロ被りで、監督は「座頭市」を念頭に置いたらしいのだがドニーさん自身はやはりキャラ被りに難色を示していたらしい。そこでドニーさんらしいアイディアで『ローグ・ワン』とはアクションの差別化を図ろうとはしたらしいが、うーんでも結局盲人じゃなくても物語には影響なかったんではないかというのが正直な感想ではある。

今作では日本も舞台

もう一つの見所は今作の舞台の一つとして日本の大阪が登場する部分だろう。大阪の殺し屋用ホテル「コンチネンタル」にジョンが身を隠すのである。ここでジョンを匿うのが真田広之演じるホテルオーナーであり殺し屋でもある男シマヅ。真田広之は近作でも『モータルコンバット』や『ブレット・トレイン』などでハリウッドでの活躍が目覚ましいのだが、今作でも非常に安定感のある演技を見せ、真田が画面に登場するだけでもなぜだか安心してしまう。

日本が舞台となるハリウッド映画は兎角「変な日本」が登場しがちだが今作ではそんなにおかしな描写は無かったと思う。とはいえ個人的には「ハリウッド映画の変な日本描写」が結構好きだったりするので若干寂しかった、と言っちゃうのはわがままかな!?あと相撲取りくずれのボディーガードが登場したがもっと活躍を見たかった!

この大阪でのシークエンスも「まあジョンを匿っていたらこうなっちゃうわなあ」というとんでもない殺戮の嵐となり「あーあ、だから言わんこっちゃない」と思わされるのだが、このシリーズというのはあまり深く考えてはいけないコミック的な荒唐無稽さが主軸なので、「とりあえず大量殺戮の理由付けになればそれでいい!」という理解で正しいのだろう。

これでもかと言わんばかりの延々続くバトルシーン!

というかそもそもこのシリーズ、物語がどうとか言う以前に「殺して殺して殺しまくること」が基本であり、その「殺し方殺され方」をどう手を変え品を変え、さらにスタイリッシュに美しく描くかに腐心した作品であり、この『コンセクエンス』も同様である。というか今作はラストということもあるのか、バトルシーンがこれでもかと言わんばかりの長さでこってりみっちりと延々続くのだ。

今作の上映時間は169分という結構な長さなのだが、その殆どの時間が徹底的なバトルシーンで占められていて、そのバトルシーンの合間に物語進行のドラマが入るといった構成なのだ。「長尺だが体感時間は1時間程度」といった感想を見たが、それはこの徹底的なバトルシーンの応酬にあると言っていいだろう。オレなどは延々とFPSゲームをプレイしている感覚に近い、常に脳髄が興奮状態にある快感を覚えるほどだった。

最後に付け加えると、イアン・マクシェーンローレンス・フィッシュバーンといったいつもの面々、グラモン侯爵役のビル・スカルスガルド、シマヅの娘アキラ役のリナ・サワヤマ、それぞれに存在感があってとてもよかった。ただしジョンを追う賞金稼ぎ役のシャミア・アンダーソンはもうちょっと強面でもよかったかなあ。それと最終舞台となるフランス・パリの市街地のロケーションも実に素晴らしかった。