またもやドニー・イェンが宇宙一の強さを見せつけるアクション作『レイジング・ファイア』!

レイジング・ファイア (監督:ベニー・チャン 2021年香港・中国映画)

「宇宙一強い男」ドニー・イェンが正義に燃える警官に扮し、凶悪極まりない犯罪集団と正面衝突する!という香港・中国製作のアクション映画です。なんと中国公開時には約240億円の興行収入をあげたというスーパーヒット作品でもあるんですね。共演は『孫文の義士団』(09)のニコラス・ツェー、スタントコーディネーターをドニーさんと長年タッグを組む谷垣健治が勤めます。監督のベニー・チャンはこの作品が遺作となりました。

正義感あふれる警察官チョンは、麻薬組織の壊滅作戦中に謎の仮面をかぶった集団に襲撃され、仲間を殺されてしまう。やがてチョンは、事件の黒幕が3年前に警察組織にはめられ投獄された元同僚ンゴウであることを知る。チョンは自身にとって弟子のような存在だったンゴウと、激しい攻防を繰り広げるが……。

レイジング・ファイア : 作品情報 - 映画.com

物語は冒頭から徹底して激しい銃撃戦と強烈な格闘の応酬、そして情け容赦ない殺戮劇に彩られます。正直ここまで凄まじいアクション作だとは思ってもみませんでした。中盤は『ダークナイト』の如き非情の物語が展開し、後半などは『ヒート』を思わせる超絶的な市街戦が行われます。とはいえそのアクションはハリウッド的な物量と力まかせのものではなく、クンフーを下地にしたスピーディーでテクニカルな格闘、周囲の環境を徹底的に利用した立体的でギミック感溢れるアクションを見せるんです。この辺りの心憎いばかりの小技の効かせ方は香港映画がこれまで培ってきた技術と、スタントコーディネーターの谷垣健治の手腕によるものなのでしょう。

そして当然ドニーさんの雄姿です!今作のドニーさんは正義を愛する熱血警官であるばかりに及び腰の上層部と対立し、常に苦渋を味わわされ、さらに凶悪な犯罪集団がかつての部下であったことを知って大いなる苦悩に打ちひしがれます。しかしそのような苦難の中、それでも正義を貫き通すために立ち上がるドニーさんに胸を熱くさせられるんです!そしていざアクションともなれば電光石火の技を繰り出し猛然と敵を打ちのめしてゆく姿にやんややんやの拍手喝采雨あられ!ドニーさん映画はどれも素晴らしいですが、今作も必見のドニーさん映画として仕上がっています。

ドニーさんだけではなく犯罪集団の首領ンゴウを演じるニコラス・ツェーの水も滴る美形振り、それとは裏腹の狂気に満ちた演技もまた本作の魅力です。とはいえ、構成として少々分かりにくい部分があるのも確かです。特に追想シーンに戸惑わされる部分があります。なんだろうなあ、と思って調べてみると今作は本来3時間ほどあった尺を2時間に縮めたものなのらしく、その部分で物語の流れにちぐはぐさが出てしまったのかもしれません。とはいえそういった部分を差し引いても今観ることの出来る最高のアクション映画であることに間違いありません。なんと言ったってドニー・イェン主演作、これは観ないと損ですよ!