リーアム・ニーソン主演のアクション映画『マークスマン』はちょっとイマイチだったなあ。

マークスマン (監督:ロバート・ローレンツ 2021年アメリカ映画)

リーアム・ニーソンといえばベテラン中のベテラン俳優ですが、アクション俳優としても『96時間』シリーズを始め多数の優れた作品に出演していますよね。そのリーアム・ニーソンが元狙撃兵に扮し、メキシコ麻薬カルテルに追われる少年を守るためにアメリカを放浪する、というアクション+ロードムービーが本作となります。監督は『人生の特等席』のロバート・ローレンツ

かつては海兵隊の狙撃兵だったジム・ハンソンは、妻に先立たれ、いまはメキシコ国境付近の町で牧場を営みながら愛犬と暮らしていた。ある日、メキシコの麻薬カルテルの魔の手から逃れようと、国境を越えてきたメキシコ人親子の母親が追手の銃弾に倒れる。息を引き取る直前の母親に11歳の息子ミゲルをシカゴに住む親類のもとに送り届けてほしいと託されたジムは、仕方なくこれを引き受ける。シカゴへ向けて旅立つ2人を、アメリカに不法侵入したカルテルが執拗に追撃する。

マークスマン : 作品情報 - 映画.com

とはいえ「リーアム・ニーソン主演のアクション作!」ということで期待たっぷりで観始めたのですが、観終わってみるとなんだかイマイチなショッパイ作品だったのが正直なところです。元敏腕海兵隊員の経歴を持ちながら今は生活苦に塗れた生活を送る主人公の姿を描いた冒頭こそ、「おお、今は苦難の中にあるけれども悪党どもを目の当たりにして突如戦闘マシーンと化す主人公の姿が見られるのだな!」と身を乗り出して観ていたのですが、救出したメキシコ人少年をシカゴにあるという彼の身内に送り届けるドラマが始まった途端になんだか物語がしょぼくなってくるんです。

だいたい警察署からこっそり少年を連れ出す方法自体なし崩しだし「でもそれバレたらどうすんの?」と思ってしまいます。主人公の妹が警官役で出てきて主人公の行動にヤキモキして見せるんですが、この警官妹の存在が物語に何の役にも立っておらず、二人の絡みが後半にあるのか?と思って観ていると肩透かしを食らわされます。彼らを追う麻薬カルテル集団は凶悪さを強調するためなのでしょうがあちこちで殺戮を繰り返すのですが、単に陰惨なだけで物語展開の助けになっていません。

最も問題なのは主人公が「金の為に少年を救った」という部分でなんだかグダグダしている部分で、観ていてスカッとしないんですよ。これなら「正義のため!」とかストレートに展開させた方がすっきりした物語になったはずじゃないですか。そしてなにしろ主人公と少年がアメリカの街々を逃げ回る展開なのですが、あんだけ広いアメリカでよその国から来たメキシコ人に簡単に追尾されんなよ、と思わされます。逃げ回っているだけなのでアクションは存在せず、かと言って緊張感があるわけでもなく、「的中率100%の狙撃兵!」という謳い文句がずっと反故にされたままなんですよ。最後でやっと大暴れする主人公なんですが、その頃には「だったらさっさとやっとけよ……」とうんざりしている自分がいるだけでした。