バットマンと宿敵ジョーカーとの熾烈な戦い!コミック『バットマン:キリング・ジョーク』

バットマン キリング・ジョーク / アラン・ムーア(作), ブライアン・ボランド(画), 秋友克也

バットマン:キリングジョーク 完全版 (ShoPro books)

バットマン:キリングジョーク 完全版 (ShoPro books)

アラン・ムーアの手で蘇るバットマンと宿敵ジョーカーとの戦い。今回のバットマンはいいぞ。これまで『ダークナイト』『ロング・ハロウィーン』『イヤーワン/イヤーツー』などバットマン・コミックの"名作"と謳われる作品が数々復刊されてきたが、その作品のどれもが練り上げられた複雑で重厚なストーリーを持つと同時に、大部であり高価であり一見さんにはちょっと取っ付きにくい作品だった。しかし今作『キリング・ジョーク』はストレートでスピード感があり、そしてなにより本が薄くて安い!さらにこれまで刊行された作品が主人公であるバットマンを中心とし、バットマンの内面や"正義"というものの本質、というちょっとややこしいストーリーを取り上げていたのに比べ、この作品の主役はあくまでヴィランであるジョーカーであり、その狂気と暴力が中心に描かれる。
そう、オレがバットマンに求めていたのは、ウダウダしたトラウマ物語なんかじゃなくて、このどこまでも暗い狂気だったんだ。哄笑をあげながら凶行を重ねるジョーカーの狂気はどこまでも歪み、これまで読んだバットマン物語の中でもピカイチの残虐さと悪辣さを披露する。ゴードン警部の姪が裸にひん剥かれて写真撮られるなんていう展開は今までなかったもんな!そしてなによりエッジの立ったグラフィックが素晴らしい!コミックはやっぱ絵だろ!そしてあの余韻のあるラスト!シビレるぜ!実はアラン・ムーアは今回発案というよりも雇われ仕事でこのコミックを担当したらしいが、その力の抜け方が逆に功を奏したんじゃないのか。どこまでも暗く歪んだ最高のバットマン・ストーリー、これまでバットマン・コミック購入に躊躇していた人にも是非オススメだ!