"生きている"ことの本質〜『東京怪童』第2巻

■東京怪童(2) / 望月ミネタロウ

東京怪童(2) (モーニング KC)

東京怪童(2) (モーニング KC)

脳神経科医院クリスチャニア。ここで治療を受ける少年少女たちがこの物語の主人公となる。何でも思ったことを全て口に出してしまう少年ハシ。所構わず突然オーガズムの訪れる少女ハナ。人間の姿が認識できない少女マリ。自分を超人だと思い込んでいる少年英雄。そして彼らを取り巻く奇妙な人々。望月ミネタロウ作『東京怪童』の1巻目は彼ら登場人物たちの紹介に終始したが、この2巻目で少しづつ物語が動き始める。
彼らはいわゆる"人とは違う脳の命令によって動いている"者達であり、それと同時に"人とは違う風景を見て生きている"者達でもある。健常者とそうでない者の違いとはどこにあるのか、ここでそれをひねくり回して書くつもりは無いが、ひとつの創作物としてこの作品を捉えるならば、彼らは、"人とは違う風景を見て生きている"がゆえに、健常者と呼ばれている者たちが現実の光景から取りこぼしている"何か"を、もしかしたら"物事の本質"と呼ばれるものの片鱗を、より克明に、体験しているのではないのか。
そう考えるなら、この作品のテーマとなるものは、まさしく"生"そのものなのではないのか。…そういったことまで考えてしまいそうな、どこまでも傑作の胎芽を感じさせる作品の序章である。痛々しく、弱々しい登場人物たちではあるけれども、痛みと、弱さは、"生"そのものを、より鮮明に意識させ、浮き上がらせてゆく。