- 作者: ジョルジュランジュラン,George Langelaan,稲葉明雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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特別これといった個性的な部分はないのですが、全体的に手堅くまとまった良質な内容の作品ばかりです。作品は古いかもしれませんが、どんなアンソロジーに入れても記憶に残る作品になるのではないかと思います。構成がしっかりしていて短編ながら人物が良く描けているからなのかもしれません。それとヨーロッパ的な翳りとか、60年代的なテクノロジーへの恐怖とか、取って付けたようですがそんな面も感じられます。
表題作『蝿』は特に説明も要らないでしょう。しかし、この原作だと蝿以外にも○○とも合体しておりますねえ…。大事故に遭ったにも拘らず無事だった男の皮肉な結末『奇跡』、動物を操ることが出来る男の顛末『御しがたい虎』、自分の手が勝手に動きはじめる『他人の手』、どれもブラック・ユーモアのよく効いた短編です。特に『他人の手』はどこかのホラー映画で同じような題材がありましたね。『彼方のどこにもいない女』はTVに写る異次元の女に恋した男の悲劇的な結末が胸に迫ります。『最終飛行』はTV番組アンビリーバボーみたいな話しだし、『考えるロボット』は『蝿』を思わせるSFホラーの掌編です。その中で『安楽椅子探偵』はひねったオチが鮮やかな、可愛らしい短編。どう可愛らしいかは読んでのお楽しみ。