サイバーパンクSF作家であるブルース・スターリングによる、1990年夏アメリカのハッカー一斉取締りを取り巻く、ハッカーと捜査官、電子コミュニティの自由を訴える活動家等を追ったドキュメント。インターネット黎明期のハッカーたちとデジタルアンダーグラウンドの混沌とした様子が生々しく伝わってきて興味深い。日進月歩のハイテク世界で15年も前といえば太古のような気がするが、(出てくるPCもコモドールのアミガだもんな。後やはりこの時代はアップル。OSはUNIXしか出てこない。ウィンドウズ?何それ?)しかしここで培われてきた理念が今のネット社会でも生きているんじゃないかと思う。本編ではグラハム・ベルの電話器発明まで遡りネットワークとハッキングの関係について言及する、いわばハッキングの歴史書みたいなもんだな。この時の取締りが警察やFBIではなく、シークレット・サービスによって行われた、という事実も面白い。
この本に興味を持ったのは、ハッキングに興味がある訳ではなく、ハッカーの持つ好奇心、知識欲、デジタルな物に触れるときの興奮、社会的情報的中央集権化への嫌悪、っていうのがなんとなく判るからだった。そこから先、もっと知識を増やしたいばっかりに一線を越えられるかどうかっていうのは別問題ですが。まあオレなんざウィンドウズ触るだけで一苦労なんで、一線越える以前の話ですけど。
ブルース・スターリングは好きなSF作家です。SF界にサイバーパンク運動が興った時はウィリアム・ギブスンも含めその作品を読み漁ったもんです。(絶版になったけど「ネットの中の島々」が一番好き。あと「ホーリーファイア」もいいな)彼自身はサイバーパンクに終結宣言を出してるけど、今でもこの言葉は使うし、また、オレ的にもサイバーパンクテイストのSFのほうが面白いですね。(最近だとグレッグ・イーガンの「宇宙消失」の前半のテイストが好きだな)
ちなみにオレのハンドルglobalheadはスターリングの短編集から付けました。オレ自身は本当はglobalでもなんでもなく、心の狭い奴なんですけどねぇ…。名前負けというかハンドル負け…。