「SFマガジン700【海外篇】」読んだ

SFマガジン700【海外篇】 (ハヤカワ文庫SF)

1959年の創刊から、つねにSF界を牽引してきた“SFマガジン”の創刊700号を記念する集大成的アンソロジー“海外篇”。黎明期の誌面を飾ったクラーク、シェクリイら巨匠。ティプトリール・グィン、マーティン、ウィリスら各年代を代表する作家たち。そして、現在SFの最先端であるイーガン、チャン、バチガルピまで。SF史を語る上で欠くことのできない作家12人の短篇を収録。オール短篇集初収録作品で贈る傑作選。編者・山岸真による「編集後記」も併録。

今は全然買っていないが、大昔、SFマガジンを何年かとっていた時期はあった。でもそんなに読んでもいなかった。本を読むのが遅いので、他に出ている小説本を読んでいると、おっつかないのである。ただ単に「自分はSFマガジンを購読しているSFファン」という、どうでもいいステータスに憧れていたのだ。
そんなSFマガジンが創刊700号と言われても別に感慨があるわけではないが、それを記念して刊行された『SFマガジン700【海外篇】』は、たいそう面白そうに思えた(ちなみに日本篇には全く興味が湧かなかった)。そして実際読んでみると、たいそうどころか、相当面白い作品が収録され、これには興奮させられた。編者は山岸真氏、あの傑作アンソロジー『スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選』を纏めた方で、なるほど、面白くないわけがない。

あとがきに書かれているが、このアンソロジーはSFマガジンに掲載されながらも「日本で出ている著者短編集に未収録に限定」し、「眠っている秀作であることには間違いないがSF史、日本SF史、翻訳SF史、SFマガジン史に欠かせない巨匠から新鋭までの超有名作家の作品ばかりを集めた「お祭り企画」」ということになっている。だから、短編集もあまさず読んでいたはずのお気に入りの作家でも、初めて読む作品であったりする部分が非常にありがたい。しかも未収録ながら面白い埋もれた傑作ばかりだ。これはアンソロジストである山岸真氏の快挙だろう。同時に、これからもこういった形で「埋もれた名作短編」をどんどんアンソロジーとしてまとめて欲しいような気がする(まあしかし、今まで企画はあったんだろうけど、そんなに売れないと判断されたんだろうなァ…)。

さてざっくり感想を。
・「遭難者」 アーサー・C・クラーク…1947年作って70年近く昔の作品なのに全然古びない面白さにびっくりした。
・「危険の報酬」 ロバート・シェクリイシェクリイが得意そうな話だよね。
・「夜明けとともに霧は沈み」 ジョージ・R・R・マーティン…マーティンは短編でもやっぱり重厚だなあ。
・「ホール・マン」 ラリイ・ニーヴン…当時マイクロブラックホール・ネタって結構流行ったような気が。
・「江戸の花」 ブルース・スターリング…うおお、これ、サイバーパンク版『帝都物語』じゃん!これは凄かった。
・「いっしょに生きよう」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア…もうホント好きな作家。1988年作ってこれ、没後発表されたのかな。晩年を思わせる生への渇望が見え隠れしてオレはなんだか切なかったよ。
・「耳を澄まして」 イアン・マクドナルド…初期の頃はこんな荘厳な作風の人だったんだ。
・「対称(シンメトリー)」 グレッグ・イーガン…例によってゴリゴリのハードSF。いつも半分も理解できてない気が…。
・「孤独」 アーシュラ・K・ル・グィン…ごめん、ルグィン苦手なんだオレ…。
・「ポータルズ・ノンストップ」 コニー・ウィリスコニー・ウィリスも苦手。でもこれはすんなり読めたほう。
・「小さき供物」 パオロ・バチガルピ…この人らしいバイオ・ホラー。
・「息吹」 テッド・チャン…すまん、テッド・チャンも苦手な作家でなあ…。