ロングレッグス (監督:オズグッド・パーキンス 2023年アメリカ映画)

新人FBI捜査官が30年間で10の家族が惨殺されたという未解決事件を捜査するが、そこには底知れぬ闇の世界が横たわっていたーーというスリラー・サスペンス映画『ロングレッグス』です。なんでも「24年に公開された独立系ホラー映画において、全米最高のオープニング成績をおさめ、独立系ホラー映画として過去10年間の全米最高興収を記録」という評判で、ちょっと楽しみにして観に行きました。
主演は『イット・フォローズ』のマイカ・モンロー、共演に『ディープ・インパクト』のブレア・アンダーウッド、『ルール』のアリシア・ウィット、『レッド・ワン』のキーナン・シプカ。そして我らがニコラス・ケイジがシリアルキラー役に挑戦します。監督・脚本は『呪われし家に咲く一輪の花』オズグッド・パーキンス。
【STORY】1990年代のオレゴン州。FBIの新人捜査官リー・ハーカーは、上司から未解決連続殺人事件の捜査を任される。10の事件に共通しているのは、父親が家族を殺害した末に自殺していること。そしてすべての犯行現場に、暗号を使って記された「ロングレッグス」という署名入りの手紙が残されていた。謎めいた手がかりをもとに、少しずつ事件の真相に近づいていくリーだったが……。
女性新人FBI捜査官が凶悪なシリアル・キラー事件を追うという物語は、『羊たちの沈黙』を彷彿させますし、残忍な連続殺人事件といった点ではあの『セブン』を、シリアル・キラーの残した謎めいた暗号が事件解決の糸口になるといった点では『ゾディアック』を思い出させるものがあります。映画『ロングレッグス』はそれら名作犯罪映画と通じる陰惨で残虐な物語が展開することになります。映画のトーンは終始暗く寒々しく、謎のシリアル・キラーが亡霊のように主人公捜査官に付きまといます。
しかし主人公リー・ハーカーが奇妙に直感の優れた女性であること、時折不気味なフラッシュバックが彼女を襲うことなどから、これが単なるクライムサスペンスにとどまらない、もっと超自然的な側面を持つ作品であることが分かってくるんですね。そして物語は次第に悪魔信仰にまつわるオカルティックな様相を呈してゆくんです。この辺りのトーンなどは映画『エンゼル・ハート』の戦慄的な展開を思わせるものがありました。
こうした、シリアル・キラーをテーマとしたクライムサスペンスだと思わせておいて実はオカルトホラーだった、といった点では好みが分かれるところでしょう。先に挙げた『羊たちの沈黙』などの作品は、残虐で非人間的な犯罪が、それが悪魔の所業ではなくまさに人間の為したものであるからこそ、そして本当に人間ならこのような恐ろしいことが出来るはずがないという部分において、鮮烈な恐怖を生み出していました。しかしこの『ロングレッグス』では、それこそ悪魔の所業という“説明がついてしまっている”部分で、絵空事として小さくまとまってしまっているんですね。
逆にクライムサスペンス味の強いオカルトホラーと受け止めるなら、こういった変化球もありなのかもしれません。ショッキングなシーンもありますが、むしろ自らの隠された過去に次第に気付いてゆく主人公リーの心理的な恐怖に重きを置いた演出が目立っていました。主演のマイカ・モンローは恐ろしい記憶に翻弄される主人公をとても巧みに演じていましたね。
で、肝心のニコケイはどこに出ていたんだ?と思っていたんですが、最後まで観て、ああ!アレだったのか!と驚かされました。今作のニコケイはこれまで以上に狂気演技を炸裂させており、大いに満足しましたね!
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