韓国産モンスターパニック映画『プロジェクト・サイレンス』が最高に面白かった

プロジェクト・サイレンス (監督:キム・テゴン 2023年韓国映画

濃霧に包まれた大橋の上で車両数10台に上る玉突き事故が発生、炎上するタンクローリーに阻まれ立ち往生となった生存者を今度は謎の影が襲う!?それは政府が極秘に開発した凶暴な実験体だったッ!?……という韓国産モンスターパニック映画『プロジェクト・サイレンス』を観てきたけどこれがとてつもなく面白かった!

主演は『パラサイト 半地下の家族』『最後まで行く』のイ・ソンギュンでこれが遺作となる。共演に『神と共に』シリーズのチュ・ジフン、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のキム・スアン。監督は『グッバイ・シングル』のキム・デゴン。脚本に『新感染 ファイナル・エクスプレス』のパク・ジュスク、『神と共に』シリーズ監督のキム・ヨンファ

【STORY】留学に旅立つ娘を空港へ送るため、海に囲まれた空港へと通じる大橋を渡っていた国家安保室の行政官ジョンウォンは、濃霧による激しい玉突き事故に巻き込まれてしまう。さらにタンクローリーの横転により有毒ガスが蔓延し、電波の喪失で通信障害が発生、救助のヘリコプターも墜落してしまい、その爆発の影響で橋は崩落の危機に陥る。橋の上では116人が孤立状態となるが、そんな最悪な状況の中、国家機密計画「プロジェクト・サイレンス」のために生み出された軍事実験体「エコー」が脱走したことが判明し……。

プロジェクト・サイレンス : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com

なにがよかったかってこの映画、最悪な状況にさらに最悪な状況がどんどんと積み重なってゆく、という情け容赦ない展開を見せてくれる部分だ。まず濃霧による大橋の上での玉突き事故発生、タンクローリー炎上で片方の道が塞がれる。その中にたまたま秘密実験体を運ぶ車両があって、実験体が逃げ出し、生存者を襲い始める。発覚を恐れた政府秘密組織は電波妨害を行い生存者の通信手段を奪う。政府は軍部を投入するが焼け石に水、さらに大規模な事故を巻き起こし橋が倒壊を始める!?おまけに政府上層部はスキャンダルを恐れ事件隠匿を決定、生存者の救出を中止!?

こんな具合に泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目、一難去ってまた一難という踏んだり蹴ったりの状況が生存者をひたすらいたぶり、彼らが悲鳴を上げながら右往左往する様はもはや地獄!よくもまあこれだけ嫌な状況を詰め込んだなと感心するほど!おまけに主人公というのが政府上層と繋がっている保身第一の食えない男で、物語のエゲツなさをさらに倍加!とはいえ登場人物の一人、レッカー車の男が要所要所でコミカルなドタバタを演じてエンタメ作品としての面目を保っており、決して気分の悪くなるような映画にはなっていない。

孤立無援の閉鎖環境での極限パニック、凶暴なモンスターの攻撃などといった点で、『ミスト』や『グエムル-漢江の怪物-』、さらには『宇宙戦争』や『クローバーフィールド』といった作品の影響が一部に見え隠れはする。しかし決して物まねや二番煎じではなく、この作品なりの独自性を貫いている部分が実に潔い。モンスターとは書いたが荒唐無稽な異形の怪物が登場するのではなくもっと現実的な存在で、この辺りで期待値を上げるとがっかりするが、だからこそ絵空事ではない恐怖が伝わってくる。

この物語の背景には2014年、乗員・乗客の死者299人、行方不明者5人、捜索作業員の死者8人を出した韓国史上最悪の海難事故「セウォル号沈没事故」があるように思えた。これは船主側の怠慢と安全管理無視により転覆・沈没事故が発生し、事故直後も乗客に適切な避難指示が出されず、船長を含む乗組員が先に脱出したことが被害をさらに拡大させたという非常に痛ましくやりきれない事故だ。厳密に管理されるべきものが杜撰に取り扱われ、責任者は保身に回るばかりで何も責任を取らないということへの不信と絶望感は、韓国市民の心に大きな傷を負わせることとなった。映画『プロジェクト・サイレンス』には、この不信と絶望と同等の感情が横たわっているような気がしてならない。

ミスト

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