シンパシー・フォー・ザ・デビル (監督:ユバル・アドラー 2023年アメリカ映画)
怪演といえばニコケイ、ニコケイと言えば怪演。あのニコラス・ケイジが例によって頭のネジが緩みきったアブナイ男を演じる映画『シンパシー・フォー・ザ・デビル』です。今回ニコケイは主演のみならず製作も務め、「今回もブチ切れまくっちゃうよ~~ッ!!」とヤル気満々の姿を見せています。そして共演はジョエル・キナマン、リメイク版『ロボコップ』や『スーサイド・スクワッド』シリーズ、ドラマ『オルタード・カーボン』の出演がありますが、実はオレこの人結構好きなんですよね。監督は『ベツレヘム 哀しみの凶弾』『マヤの秘密』のユバル・アドラー。
【STORY】実直な会社員デイビッドは妻の出産に立ち会うため、ラスベガス中心部にある病院へ向かって車を走らせていた。しかし病院の駐車場で、後部座席に見知らぬ男が乗り込んでくる。拳銃を突きつけられて仕方なく車を発進させたデイビッドは、ハイウェイを走行しながら脱出しようと手を尽くすが、非情で狡猾な男にことごとく阻まれてしまう。支離滅裂な言動を連発しデイビッドに異常なほどの悪意を向ける男は暴走をエスカレートさせ、やがてデイビッドとともに立ち寄ったダイナーで大惨事を呼び起こす。
ニコケイはオレも大好きな俳優で、主演映画は気付いたら観るようにはしているんですが、なにしろ一時膨大な借金を返すためにB級C級Z級と無節操に映画に出まくっていたものですから、その全ては把握しきれておりません。それでもお気に入りのニコケイ映画を挙げるなら、古くは『ワイルド・アット・ハート』や『コン・エアー』、ちょっと前なら『ゴーストライダー』や『バッド・ルーテナント』、忘れちゃいけない『キック・アス』、近作だったら『マッシブ・タレント』と『レンフィールド』、さらに『ドリーム・シナリオ』といったところが忘れ難いですね。……あれ?B級C級Z級とは書いたけど、どれも傑作ばかりじゃあーりませんか!?
そんなニコケイが今作で演じるのは不気味なカージャック男。出産間近の妻と会うため病院へと急ぐデイビッドさんの車をカージャックしてしまうんですね。男はなんだか知らないけどやたら興奮しまくり支離滅裂な行動と言動を繰り返すばかり、目的がなんなのか、何を要求しているのか、なんかもうまるでわっけわかんなくてデイビットさん涙目状態!そして男は行く道々でわあわあと喚き散らしながら次々と凶行を繰り返すのです!デイビットさんに助かるすべはあるのか!?男はいったい誰で、何がしたいのか!?というかそもそもこいつなんでこんなにキレ散らかしてるのか!?単にバカ?真正キ印?デイビットさんの悪夢は始まったばかり!?
とまあそんなお話なんですが、ニコケイ兄さん、今作でもブチ切れ怪人役をとても楽しそうに演じております。もはやニコケイ兄さんにとってブチ切れ怪人は伝統芸の域に達しており、これが歌舞伎舞台なら「いよッ!ニコケイ屋!」と掛け声の一つでもかけてやりたくなるところ。とはいえ、なにしろ例によって例のごとくな怪人演技なものですから、「ああ、いつものニコケイだなあ」とにまにましながら確認するのがこの映画の観方であって、スリルとサスペンス、謎に満ちたシナリオ、闇の深淵の如き狂気、などなどを味わう映画では決してありません。だから『ヒッチャー』のルトガー・ハウアーのような不気味さや『ブルーベルベット』のデニス・ホッパーのような狂気を期待してはいけないんです。でもそれでいいんです。ニコケイが今日も怪しくとぐろを巻いてくれれば、それで世界は平和なんです(そうなのか?)。