宇宙忍者v.s.最強格闘軍団の死闘!/映画『アース・フォール JIU JITSU』

アース・フォール JIU JITSU (監督:ディミトリ・ロゴセティス 2020年アメリカ映画)

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ニコラス・ケイジB級映画の似合う男だ。似合うというか、ニコケイが出演しているような映画は大概B級なのだ。観る側も「ニコケイが出演してるのか」と知るだけでどんな映画なのか即座に分かるという便利な試金石でもある。そんなニコケイ映画を、ニコケイ映画という理由から、何一つ期待すること無く観る。すると、期待していなかった分、割と面白い部分も発見できる。つまりニコケイは、逆説的に映画を面白くさせるという機能すら有しているのだ。ニコケイ、結構やるじゃないか。

そんな愛すべきニコケイの、新作映画が公開された。タイトルは『アース・フォール JIU JITSU』、なんでもSF映画なのらしい。ちなみに「JIU JITSU」は「柔術」ということなのらしい。つまり格闘映画でもあるのだ。SFと格闘と、そしてニコケイ。もう、この3つの要素が並んでいるだけで、心がホッコリしてくる。人生捨てたもんじゃないな、と思えてくる。だって、観る前から、こんなにトンチキさを感じさせてくれるなんて、他の映画じゃ、絶対に考えられない。

まあ、どうせトンチキSFだから、粗筋書くのもタルいんだが、取り敢えず説明しとくとだな。この映画、宇宙からやって来たニンジャ・エイリアンと、このエイリアンを倒すべく集結した、最強格闘家軍団との戦いを描くものなんだな。なんでエイリアンと格闘家は戦うのか?それはこのエイリアンが戦うのが大好きな奴で、彗星に乗って6年に一回地球にやってきては地球人格闘家と戦う、という事なのらしい。戦いを拒否したら地球を滅ぼすってんだからおっかない。いやー、なんだか格闘ゲームのとってつけたような設定みたいなお話ですね!

とか言いつつ実際観始めたらこれが、結構楽しめたじゃないか。「期待してない分楽しめるニコケイ効果」が出たせいもあるかとは思うが。まずお話なんてあってないようなもの、設定はインチキだしプロットもグダグダではあるんだが、その分映画の間中殆ど誰かと誰かが戦っている。映画それ自体が「格闘」にのみ特化しているのだ。煎じ詰めるなら「エイリアンと人間、どっちが強いか!?」というお話でしかないから、そこを徹底的に描いているのだ。この構成なにかに似てるなあと思ったら昔の香港アクション映画なんだよな。物語はインチキだけどアクションは面白い、みたいなさ。

まずエイリアンだが、出てくるのは1体のみ。変なゴーグルして強化服みたいのを着ている。格闘技に長け、剣や棒を操り、手裏剣を投げ、おまけに光学迷彩で透明化することが出来る。こんなヤツがジャングルで人間を狙うんだね!……ってかそれ、『プレデター』やないかい!?おまけに傷を負ってもすぐ修復してしまい殆ど無敵。「俺より強い奴と戦いたい」と地球にやってきた割にチートだらけだろお前!?

一方人間側だが実はニコケイは主役じゃなくて、怪しげな戯言をのたまう導師みたいな役。格闘もするが、ニコケイに格闘って、ホント似合わねえ……。実際の主役はアラン・ムーシ演じるジェイクという名のタフガイで、こいつは格闘万能。もう一人、トニー・ジャー演じるケウンのムエタイまたツエエエ!ていうかトニー・ジャーが出てるのが何しろ嬉しい映画だよな!他にもカポエラ使いや鈍器使い、ヌンチャクやボウガン使いの女など9人の戦士が登場するんだな。そういやフランク・グリロも出演してるよッ。

そんな感じでニンジャ・エイリアンと地球人戦士との戦いが次々と描かれてゆくことになるんだが、地球人戦士が持つ得物がそれぞれ別なので変化が付き、延々描かれる戦いに退屈しないんだ。まあニンジャ・エイリアンが「やられてもリカバリーすりゃいいしー」というチート野郎な上に、地球人戦士が実のところあんまり強くなくて「宇宙一の猛者を決める壮絶極まる戦いッ!!」ってなアクションには手が届いていないんだが、少なくとアクションのみで飽きさせる事なくラストまで繋いだ潔い作りが好印象だったな。こういう気楽に観られて映画館出たらすぐ忘れてしまうセンスの映画、オレは嫌いじゃないな。