SF映画『アンチ・ライフ』は予想を遥かに上回るトンチキ映画だったッ!?

アンチ・ライフ (監督:ジョン・スーツ 2020年カナダ映画

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2021年に入って間もないというのに、早くも「本年度ワーストワン」の評価を上げたくなっちゃうようなトンチキ映画の登場である。というか、観た事を早く忘れて何も知らなかった頃の清らかな自分に戻りたいとすら思ったぞ!

タイトルは『アンチ・ライフ』、予告編を観た時から既にトンチキな臭いが猛烈に漂っており、地雷間違いなしとは思ったものの、怖いもの見たさでついつい劇場に足を踏み入れてしまったのが運の尽き、これがもう最初の予想を遥かに上回るトンチキさで、もはや「酷かった」という感想しか思い浮かばない。自主製作映画だってもうちょっと可愛げがあるだろッ!?

一応物語のジャンルはSFアクションスリラーとなる。時は西暦2242年、地球は疫病の流行によって滅亡に瀕しており、選ばれた者たちは「ニューアース」と呼ばれる居住可能な惑星へ避難を開始していたところが主人公の乗る船で異様な殺人事件が発生、それは謎の寄生生命体が起こしたものだったのだ。主人公らは生きてニューアースに辿り着けるのか!?というもの。

まずなにしろ主人公が徹底的に魅力がない。恋人を追って宇宙船に密航した男という設定なんだが、なんかもうヌボッとした顔に髭面のスットコドッコイなキャラで、二言目には「家族を守るんだ(キリッ)」とか言うけどそもそも自分すら守り切れていない。だいたい大航海時代じゃあるまいし「宇宙船に密航」ってのもどうなのよ?そんな主人公が宇宙船で割り当てられた仕事が「便所掃除」ってのもなんなのよ?

その便所に「数百倍に希釈しないと何もかも溶かしてしまう謎洗剤」なんてのが出てきて「ああ、これが最後にモンスターを倒すアイテムになるんだろうな……」とすぐ分かっちゃう上に、この洗剤を加工するとアルコールになってみんなでそれを飲んでる、とかもう訳が分からない。他の登場人物は誰も彼もなんだか知らないが荒くれ者の脳筋野郎ばかり、それに合わせて物語展開も徹底して知能指数がアレな流れなんだ!

最初のサスペンスは謎の生命体に寄生された男が「ううう……体に何かいる!」とかなんとか呻き始める所だが、こっからもう既視感ありまくりで観ているこっちまで呻き声が出る。この謎の生命体に寄生された人間が他の人間を襲い出す。つまりは宇宙船でゾンビ発生ってなお話なんだが、工夫すりゃあなんとでもサスペンスを盛り上げ面白くできるだろうに、なにしろ脳筋展開なんでいつも力でゴリ押し、おまけに宇宙船の中で機関銃をバリバリ撃ちまくる!?いやそれ謎の生命体よりもマズくないか!?で、劣勢ともなるとすぐ「俺たちゃダメだあ」と弱音を吐くメンタルの弱さ。ヤル気の無い脳筋って何の役にも立たんのな!

それと低予算映画ということからかセットが酷く、照明を暗くして誤魔化しているのはB級映画ではよくあるよな。壁面なんてプラスチックパレット貼ってるだけですよ……。それにしても「冷凍睡眠ポッド」が大工仕事で作ったようにしか見えない(扉がホームセンターで買ってきたような蝶番で留められてる……)上に、眠ってる人間を起こすのにポッドのガラス窓をバンバン叩くってどういうSFなんだ!?冷凍睡眠ポッドもそうなんだが居住室のベッドに枕が無くて、「寝るのつらいだろ」とそればっかり気になった……。

 しかしこんな酷い映画になぜかブルース・ウィリスが出演しており、主人公役じゃないんだが、彼がいたお陰でなんとか観られるものにはなっていた。最近ブルース・ウィリスが出演するB級映画じゃあ唐変木みたいに「いるだけ」なんだが、この映画では活躍してたよ!というか他のキャラがなんの活躍もしていないから相対的に活躍していたように見えただけかもしれんけど!彼が出て無ければレンタル店やサブスク辺りで作品数のカサ増しするだけのために存在する二束三文なSFサスペンスとしてしか扱われていない映画だったんだろうなあ!