ニコケイがニコケイを演じるニコケイ映画『マッシブ・タレント』

マッシブ・タレント (監督:トム・ゴーミカン 2022年アメリカ映画)

おいおいおいなんだよこれ最高じゃないか。アカデミー脚本賞をあげてもいいぐらいに神技的なシナリオじゃないか。作品自体も奇跡のような完成度だ。そしてなにより主演のニコラス・ケイジニコラス・ケイジ史上最高のカッコよさなのだ。

何かと話題になりネットミームにすらなっているニコラス・ケイジだが、どうにも憎めない俳優なのも確かだ。膨大な借金を返すために頻繁に映画出演しているのらしく、オレもちょくちょく観てはいるのだけれども、あまりに作品数が多すぎてこれまでどれを見たのかすら覚えていない。作品自体も玉石混交で、そこそこの傑作からカス作品まで様々だが、もはや何が面白かったとか言うよりも、「ニコケイ映画」という映画の一ジャンルを観ているような気にすらさせられる。

そんな「ニコケイ映画」の新作『マッシブ・タレント』は、ニコケイがニコケイ自身を演じる!?という最後の禁じ手を使ってきた作品である。物語は落ち目の俳優で家族からも愛想を尽かされ涙目状態のニコケイが主人公。そんなニコケイに大富豪の誕生パーティー出席の高額オファーが飛び込み、スペインへと出かけるニコケイだが、そこへCIAが接触、大富豪が犯罪結社の首領だという証拠を掴むためスパイをしろと命令されるのだ。しかしこの大富豪、なんとニコケイの超絶大ファンだった!?

この映画、これでもかと描かれる「ニコケイいじり」が凄まじい。大スター・ニコケイ、落ち目俳優ニコケイ、人間臭いニコケイ、ダメ人間ニコケイ、あらゆるニコケイの側面が奔流のように描かれ、それはあたかもニコケイ万華鏡、ニコケイのフルコースとなって観る者の脳髄をニコケイ漬けにしてゆくのである。そしてそれは本当のニコケイであるのと同時に映画フィクションとしてのニコケイでもあるのだ。ただ一つ言えるのは、ここにはニコケイ嫌いは登場しないという事だ(家族以外は)。

そんなニコケイが幾多の危機を乗り越え、乗り越えたつもりがだいたいドジを踏み、家族の為に命の危険を顧みず、顧みないばかりにだいたい絶体絶命となり、そうして遂に「ホントっすかニコケイさん!?」と思わせる凄まじいアクションを見せつけてくれるのである。そしてなんとこれが最高にカッコいいのだ!こんなにカッコよくていいんですかニコケイさん!?とすら思わされてしまうのだ!そしてこのカッコよさすらある意味アイロニーであり一つのギャグとしてもとれてしまうという部分にニコケイという俳優の特殊な立ち位置が透けて見えるのだ。そんなニコケイが愛おしく、そしてまたさらに好きになってしまう作品だった。