シャザム!神々の怒り(監督 デビッド・F・サンドバーグ 2023年アメリカ映画)
古代の魔法によって変身した6人のスーパーヒーローたちが活躍する!というDCコミック原作のスーパーヒーロー映画、『シャザム!』の続編『シャザム!神々の怒り』です。しかしこのスーパーヒーローの面々、見た目は大人なんですが、実は子供たちの変身した姿なんですね。今回ヒーローたちの敵となるのはシャザムから魔法の力を取り戻しに来た天空の神ゼウスの3人の娘たち。神々の怒りに触れたシャザムの面々は果たして打ち勝つことができるのか!?
主演はザカリー・リーバイ、神の3姉妹役にヘレン・ミレン、ルーシー・リュー、そして『ウエスト・サイド・ストーリー』のマリア役で注目された新鋭レイチェル・ゼグラーというのも嬉しいですね。監督は前作に引き続きデビッド・F・サンドバーグ。
【物語】古代の魔術師より6人の神のパワー(S=ソロモンの知恵、H=ヘラクレスの剛力、A=アトラスのスタミナ、Z=ゼウスの万能、A=アキレスの勇気、M=マーキュリーの神速)を授かった少年ビリーは、魔法の言葉「シャザム!(S.H.A.Z.A.M!)」と唱えると、超絶マッチョな最強ヒーローのシャザムに変身する。しかし、見た目は大人でも中身は子ども、ヒーローとしても半人前のシャザムは、大人の事情が理解できずに神々を怒らせてしまい、その結果、最強の神の娘たち「恐怖の3姉妹」がペットのドラゴンを引き連れて地球に襲来。未曽有の危機を前に、シャザムは世界のためではなく、ダメな自分を受け入れてくれた仲間のために立ち上がるが……。
スーパーヒーロー映画はMCUやDCEUで山ほど作られて結構食傷気味でもありますが、その中でもこの『シャザム!』シリーズはちょっと異色なんですね。まずよくあるスーパーヒーロー映画みたいに暗かったり深刻ぶったりしないんですよ。まずこの作品、「少年少女の物語」であり、つまりは子供たちが主人公という事で、とても目線が低く作られているんですね。ですから内容は明るく軽快でユーモラス、仲間がいて家族がいて、その中で和気あいあいとしたり協力しあったり青春してみたり、友情や愛情を育んだりするわけなんですね。こういった部分がとても和む好印象な作品なんですよ。
とはいえこういった作風だから優れている、というよりも、これまでのスーパーヒーロー映画がアダルトな路線で人気を勝ち得ていた部分に、カウンター的に登場したヒーローである、という部分に新鮮さを覚えるのでしょう。MCUやDCEUが映画界を席巻する前にこの作品が作られていたら単に「子供っぽい」と酷評されたかもしれません。逆に今現在展開するスーパーヒーロー世界が(作品にもよりますが)少々気真面目過ぎて息苦しい分、こういったスーパーヒーロー映画の基本に立ち帰ったような作品が心地よく感じるという事なんだろうと思います。
また、世界観の中心となるのが「魔法」であったり「神話世界」であったりというのも楽しいですね。もちろん「魔法」「神話世界」はこれまでのスーパーヒーロー作品でも取り上げられていますが、『シャザム!』においては目線が低い部分「御伽噺」的なファンタジックな味わいがあるんですね。それと、少年ビリー・バットソンの変身した勇者シャザムのルックスがどうにもオッサン臭くてあまりカッコよくない、と大概の方は思われるでしょうが、これも「少年がオッサン臭いヒーローに変身しちゃう」という落差に面白さを求めたビジュアルなんだと思います。
さて今回シャザム隊と相対するのはギリシャ神話の最高神ゼウスのその3人の娘たちなんですね。これがもうなにしろ神々なわけですから、最強無敵なわけなんですよ。こんな最強無敵の神々とどう戦うのか?が今作の醍醐味となりますが、それと併せこの3人の娘たちの配役が最高なんですよね。最初にも書きましたがヘレン・ミレン、ルーシー・リュー、そして『ウエスト・サイド・ストーリー』のレイチェル・ゼグラーが演じますが、ヘレン・ミレンにしてもルーシー・リューにしても既にして映画界の女神ですから、もはや「最強の神」としての貫禄十分、そこに今が旬の最高に初々しいレイチェル・ゼグラーが加わるのですから、この3人を眺めているだけで眼福です。
映画の内容にはあまり触れてませんが、粗筋に書いたようなシンプルで分かりやすい愉快痛快冒険活劇だと思ってもらえればいいでしょう。心弾む楽しい作品として仕上がっていることはお約束します。こんな作品がクセモノだらけでクセのあるお話ばかりのDCEUに存在するというというのも不思議ですが、だからこそ貴重な作品だとも言えるでしょうね。逆にMCUやDECUに興味のない方にこそお勧めできるかもしれません。