レッド・ワン (監督:ジェイク・カスダン 2024年アメリカ映画)
クリスマス・イブの前夜(要するにイブイブ)に「レッド・ワン」ことサンタクロースが誘拐され、サンタの国の警備隊長カラムが誘拐の原因を作ったハッカー、ジャックと共に犯人を追う、というファンタジーアドベンチャー作品です。
サンタでクリスマスというと「なーんだ子供向けじゃん」と思われるかもしれませんが、これがびっくりするほど楽しめる映画として完成していました。なにしろ主演はドウェイン・ジョンソンとクリス・エバンスとルーシー・リュー、この出演陣だけでも映画を見る価値ありでしょう。そして監督が『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』『ジュマンジ ネクスト・レベル』のジェイク・カスダン、ファンタジーアドベンチャーとしての完成度も十分期待できるというものです。
《STORY》クリスマス・イブの前夜、コードネーム「レッド・ワン」ことサンタクロースが何者かに誘拐された。サンタクロース護衛隊長のカラムは、世界一の追跡者にして賞金稼ぎのジャックと手を組み、サンタ救出のために世界中を飛び回ることに。しかし彼らの前に立ちはだかる誘拐犯は、サンタの力を利用して、ある恐ろしい計画を企てていた。
この『レッド・ワン』、確かに基本的にはファミリー向けの作品ですが、様々な部分がしっかり作り込まれているので甘すぎたり子供だましだったりする部分がないんですよ。例えば描かれるサンタクロースの国にしても御伽噺のような世界ではなく、コンピューターディスプレイが縦横に並びSF的な小道具がそちこちに配された近未来的な情景でもって描かれ、そこで精霊やクリーチャーたちが働いていたりするんですね。
この作品では神話や伝説の世界が実際に存在し、それを人間世界の特殊機関が極秘に保守している、という設定なっているんですね。サンタの国はその一つであり、サンタとは関係なく伝説伝承に残っているクリーチャーやモンスターも登場するんです。こういったビジョンからは宇宙人を人間の特殊機関が管理する映画『メン・イン・ブラック』を思わせるものがあり、『メン・イン・ブラック』と同様の、クリーチャーたちが大挙して登場する楽しさがあるんですよ。
こんな世界でドウェイン・ジョンソン演じる警備隊長カラムとは何者かというと、人間の姿をしていますがある種の精霊なんですね。だから人間にはない超絶的な力や特殊能力を持っており、また、小さな玩具を巨大化させて使役するSFガジェットも携えてもいます。すなわちこれ、スーパーヒーローということなんですよ。ドウェイン・ジョンソンはかつて『ブラックアダム』というDCヒーローを演じたことがありますが、この作品でも特殊能力を駆使するスーパーヒーローとして登場するということなんですね。
その中でクリス・エバンス演じるジャックとはなにかというと、空想的なファンタジー&スーパーヒーロー世界に生身の人間として登場することにより、映画の世界にリアリティを加味する役割なんですね。最初ジャックはセコくてインチキなダメ人間として登場します。ジャックのこの人間的な猥雑さが作品世界を地に足の着いたものとし、同時に観る者に反発あるいは共感できる人間像を提供します。ジャックのこのダメ人間ぶりがファミリー向け映画の範疇にとどまらない人間臭いドラマを持ち込むんです。
こうしてスーパーヒーローであるドウェイン・ジョンソンと、ダメ人間のクリス・エバンスとが協力し合い、最初は反発しあいながらも次第に強い絆が生まれてくる、というお約束のバディ・ムービーとして展開してゆくのもこの映画の楽しさです。設定も世界観もキャラも実に充実しているので、シリーズ化もあるかもしれないな?と思ったらやはり企画があるようで、今後の展開も楽しみな作品でしたね。サンタでクリスマスというテーマに食わず嫌いせず、ぜひご覧になっていただけるといいかと思います。