バイオレント・ナイト (監督:トミー・ウィルコラ 2022年アメリカ映画)
それはクリスマスイヴの夜のこと。よい子にプレゼントを配っていたサンタクロースがあるお屋敷に入ったところ、なんと狂暴な強盗団が侵入!次々と使用人を血の海に沈めてゆく強盗団!よい子の命にも危険が迫る!「遂に私の真の力を見せる時が来たか……」こうしてサンタクロースのバイオレンスな夜が始まった!?そう、それはサイレント・ナイトじゃない……【バイオレント・ナイト】だッ!?
サンタさん役を『ストレンジャー・シングス 未知の世界』『ブラック・ウィドウ』のデビッド・ハーバー、強盗団の残忍なボスを『ジョン・ウィック』『ザ・メニュー』のジョン・レグイザモが演じています。監督は『セブン・シスターズ』『ヘンゼル&グレーテル』のトニー・ウィルコラ。
【物語】物欲主義な子どもたちに嫌気がさして久しく、なにかと疲れ気味のサンタクロースは、それでも体に鞭を打ち、良い子にプレゼントを届けるため、トナカイの引くソリに乗ってクリスマスイブの空を駆け回っていた。とある富豪一家の豪邸に降り立ち、煙突から中へ入ったサンタは、金庫にある3億ドルの現金を強奪しようと邸内に潜入していた悪党のスクルージ一味と鉢合わせてしまう。見なかったことにしてその場を去ろうとするも、すぐさま大騒動に発展。子どもたちにプレゼントを届ける能力はあっても戦闘能力はゼロのサンタが、武装集団を相手に孤軍奮闘する。
暴力サンタが大暴れする映画『バイオレント・ナイト』です。なにしろ「サイレント」と「バイオレント」が掛けてあるわけですな!そして登場するサンタは本物のサンタ!トナカイの曳く空飛ぶ橇に乗って登場です!いわゆる超自然的な存在という訳ですが、魔法っぽいものはほとんど使えません。使うのは強靭な肉体!そして強大なハンマー!あんたはマイティ・ソーかい!?だいたいサンタのクセになんでそんなに肉弾戦が強いんだよ!?まあこういう映画だから理由なんかなくてもいいか……と思ってたら途中できちんと「サンタがバイオレンスな理由」が説明されていて、お、これはなかなかやる映画じゃないかと思わされます。
サンタが主演の映画ではありますが決して子供向けではありません。むしろ「R15+指定」の残虐映画です!悪党はガシガシ人を殺してゆきますし、サンタも負けじと暴力の限りを尽くします!肉体破壊は当たり前!家の中にある様々なアイテムを使い、あの手この手で惨たらしく敵を屠ってゆきます!そして辺りは血の海死体の山!痛そうなシーンも満載!鈍器に刃物、銃撃戦!爆発!爆炎!雨あられ!よい子にはプレゼントを、悪党には惨たらしい死を!とはいえサンタも無敵じゃなくて、悪党の執拗な攻撃に満身創痍、血塗れになって戦いを繰り広げてゆくのですよ!
クリスマスの夜に恐ろしい事件が起こる映画と言えば『ダイ・ハード』に『ホーム・アローン』。つまりはこの映画、サンタクロース版『ダイ・ハード』であり『ホーム・アローン』という事もできるんですな。実は作中でもこの2本の映画がきちんと言及されていて、両作のオマージュともとれるシーンが登場したりもします。口の巧い住人が悪党に取り入ろうとしたり、迷彩服姿の傭兵軍団が雪上車に乗ってやってくる、なんて『ダイ・ハード』の1シーンを思わせますし、部屋の中にトラップを仕掛けて悪党を陥れるシーンなどはそのまま『ホーム・アローン』でしょう。
とはいえこの作品、ただサンタが暴れ回るだけの映画では決してありません。サンタは本当にいるのか?サンタの存在を信じるとはどういうことなのか?という部分を描くことできちんとクリスマス・ムービーになっていて、子供たちに夢と希望を与えるサンタの役割をちゃんと説明しているんです。子供に観せられないクリスマス・ムービーですけどね!?惜しむらくはこの作品、できる事ならクリスマス・シーズンに観たほうが気分も盛り上がっただろうな、と思わされた部分が残念でしたね。しかしまあシーズンを外している部分がまたB級作品ぽくっていいんですが!