アメリカの「ネット怪談」を起源に持つホラー・アンソロジー『【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ』

【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ/ミスター・クリーピーパスタ (編集)、倉田真木(訳)、岡田ウェンディ(訳)

【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ (ハヤカワ文庫NV)

ネットの恐怖都市伝説のコピペから生まれたホラージャンル“クリーピーパスタ”。綿密に計画をたて女性の家に忍び込んだ殺人ストーカーが異変に巻き込まれる「殺人者ジェフは時間厳守」や、ジャーナリスト志望者がフロッピーディスクに込められた呪いを目撃する「スマイル・モンタナ」など、アメリカ・クリーピーパスタ界の人気ユーチューバーが厳選した悪夢の物語。身の毛がよだつ15篇の恐怖のショートストーリー傑作集

この『【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ』はアメリカのネット怪談「クリーピーパスタ」をテーマに編まれたアンソロジーだ。クリーピーパスタ。それはクリーミーなソースのパスタでもクリスピーな味わいのパスタのことでもない。「クリーピーパスタ」とは「身の毛もよだつという意味の「クリーピー」という単語と、「コピー&ペースト」を組み合わせた造語」なのだという。

正確な起源は不明で、1990年代にチェーンメールから広まったとか、2000年代初期に画像掲示板4チャンネルの超常現象を専門に扱う掲示板から生まれたとか諸説ありますが、現在はネット上で発表されているホラー作品を広く「クリーピーパスタ」と呼ぶようになっています。「クリーピーパスタ」というのは、身の毛もよだつという意味の「クリーピー」という単語と、「コピー&ペースト」を組み合わせた造語です。

「クリーピーパスタ」とは? 『【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ』訳者あとがき|Hayakawa Books & Magazines(β)

いわば日本でいう匿名掲示板サイトの「オカルト板」で有名になっちゃうほどの怖い話、ということなのだ。

とはいえ現在ではその定義も拡大していて、「インターネットで書かれたホラー作品はほとんど全てクリーピーパスタに分類されるようになっており、多くのクリーピーパスタは匿名ではなく名前のある作者によって創作されている」のだという*1。実際このアンソロジーもその流れにあり、誤解のないように書くならば「ネット怪談を集めたホラー・アンソロジー」ではなく、「最初から作者が存在しクリーピーパスタの名のもとにネット公開されたホラー作品のアンソロジー」ということになる。

また、「クリーピーパスタ」の作家たちも、基本的にネットを活躍の場とし、ネットで評価を得る事、注目を浴びる事を目的としているのだろう。日本にも「なろう系」の作家、ないしはサイトというのがあるようだが、そういった構造の元に発表された作品ということができるのだ。その中で生み出された作品は玉石混交ではあろうが、こうして1冊の書籍に取り上げられた作家/作品は、読んでみて、やはり面白い。様々な創作物がネットを介して公開されるようになり、プロもアマも同列に受け入れられそして評価されるようになった、この現代らしいアンソロジーだと言えるだろう。

収録されている作品は15編、それらを細かく紹介することはしないが、日本産のネット怪談の「ジットリとした怖さ」とはまた違う、ヴィヴィッドでクレイジーなホラー作品が並ぶことになる。スプラッター作品も割と多い。作品はどれも短く、サクッと読んでサクッと怖がることの出来る物語ばかりだ。逆にこの程度の短さだからこそ恐怖がストレートに迫ってくるのかもしれない。オレはどれも楽しめたね。