キューブリック映画ポスターの集大成『スタンリー・キューブリック 映画ポスター・アーカイヴ』

スタンリー・キューブリック 映画ポスター・アーカイヴ 宣伝ポスターまでもコントロールした男 / 井上由一(著)

スタンリー・キューブリック 映画ポスター・アーカイヴ 宣伝ポスターまでもコントロールした男

2001年宇宙の旅』や『時計仕掛けのオレンジ』、『シャイニング』など、映画史に残る傑作名作を残してきた天才映画監督スタンリー・キューブリックだが、今年はそのキューブリックの監督デビュー70周年に当たるのだという。それを記念する意味を込めて、キューブリックがこれまで監督してきた全作品の映画ポスター・アーカイヴ集が発売された。タイトルは『スタンリー・キューブリック 映画ポスター・アーカイヴ 宣伝ポスターまでもコントロールした男』。

完璧主義者として知られるキューブリックは「ポスターや配給方法、宣伝コンセプトまでを完全にコントロールした」のだという。さらに彼はスチール・カメラマンを撮影現場に入れるのを嫌い、自ら本編フィルムから宣伝用スチールを選定していたという徹底ぶりだ。

 例えば……世界共通のポスター・デザインでも国別の作品ロゴまでキューブリック本人に許可を取る必要があった。 各映画館での動員アベレージを確認し、自作に相応しい上映劇場を選出。映写技師用に上映マニュアルを作成。 日本でも公開当時、大きな話題となった『フルメタル・ジャケット』日本語字幕スーパー翻訳者の交代劇など、 その徹底的なコントロールぶりは、各国の配給会社をも震え上げさせてきた。

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この『スタンリー・キューブリック 映画ポスター・アーカイヴ』では1953年の監督デビュー作『恐怖と欲望』から遺作となった1999年作『アイズ・ワイド・シャット』までの13作の「撮影中に制作された先行版ポスター、監督が没にした幻のポスター案なども含めた300枚以上」が掲載されている。

キューブリック作品の初期の4、5作はオレは未見で、『ロリータ』あたりから全部観ているといった感じだ(『スパルタカス』は途中で挫折した……まだDVDが家にあるから再挑戦してみるか)。そんな中で、やはり『博士の異常な愛情』からのポスター群は眺めていて凄みを感じる。そしてやはり圧巻なのは40頁もの分量を割いた『2001年宇宙の旅』のポスター、スチール写真、宣伝素材の数々だろう。これを眺めるだけのためにもこの本を買ってよかったと思えたほどだ。

続く『時計仕掛けのオレンジ』がまたいい。これまで見たことのないポスターが相当並んでいたのは特にこの『時計仕掛けのオレンジ』のように思える。続く『バリー・リンドン』『シャイニング』『フルメタル・ジャケット』等、どれもいい。本書ではちょっとしたコピーの違うポスターですら全て網羅している。巻末には「ビジュアルで見るキューブリック作品の宣伝展開」と題してマスコミ用プレスブックまで収録されているのだが、これがまた初めて見るようなものばかりで充実している。

それと併せて、これだけの資料を集め尽くし網羅した著者の尽力ぶりには恐れ入ってしまう。この労力の賜物がこうして素晴らしいポスターブックを生み出したのだ。オレは熱烈なキューブリック信者というものではないが、それでもポスターという切り口で稀代の天才監督の成果を表して見せたこの著作には大いに感銘を受けた。

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