■スタンリーのお弁当箱 (監督:アモール・グプテ 2011年インド映画)
インドの小学生、スタンリーは想像力豊かでとても機転の利く男の子。でも彼には学校にお弁当を持ってこられない、という事情があったのです…。というヒューマンドラマ。歌もなく踊りもなく映画の長さは90分前後。描かれるのは小学校とそこに通う男の子たち、そして先生、という非常に限定された舞台。自分が知っているようなインド映画とは随分勝手が違うので、これはいったいどんなお話なんだろう、と思って観てみました。
スタンリーの通う学校のクラスは男子だけなんですが、ちょっとした喧嘩はあるものの、基本的にはみんな仲良しで相手の気持ちを思いやってあげられるいい子ばかりなんですね。こういった物語に登場しそうないじめっ子なんかは登場しません。だから、スタンリーがどうやらお昼ご飯食べてないようだ…と気づいたクラスメイトたちは、スタンリーに自分のお弁当を分けてあげたりするんですね。みんな優しいなあ。
しかーし!いじめっ子は登場しない代わり、イヤ〜な先生が登場します!なんとこの先生、子供たちにたかって彼らのお弁当を食べちゃうんです!変態教師や暴力教師もイヤですが、子供のお弁当食べる教師って、もうこれおかし過ぎるだろ!?インドってこんな先生ホントにおるの?さらにこの先生、みんなにお弁当を貰ってるスタンリーに嫉妬して「弁当も持ってこれない奴は学校くんな!」などと訳の分からない理屈を並べ立て、とうとうスタンリーは学校に来なくなっちゃうんです!しかしスタンリーは…と、これから先は観てのお楽しみ。
なにしろお弁当がテーマなだけに、インドのいろんな美味しそうなお弁当が見られるのがまず楽しいです。オレなんて観ながら「すげー!インド人って毎日インド料理食べられるんだ!?」などと、つまみ食い教師並に訳の分からないことをほざいていました。つまみ食い教師はかなりイカレてはいましたが、映画のつくり自体は品行方正で上品で、NHKが日曜のお昼に放送しているような雰囲気です。音楽も「♪少年はぁ〜羽ばたくぅ〜」とか歌ってくれちゃってるのがちょい面映ゆい。これ実は、この作品が映画ではなくワークショップとして制作されたという経緯があったからなんでしょう。
しかし映画では語られませんが、同じくインド映画『きっとうまくいく』で、言外にインドのアウトカーストを匂わせていたように、この映画もそういった部分を、やはり匂わせているように思えました。それと同時に、そういったカーストでさえきちんと義務教育を受けさせる現代インドの教育への取り組みも感じさせるんです。観終わって、結構重いテーマを扱っていたことに気づかされますが、それと同時に、辛い現実の中でも健気に生きるインド少年の未来にきちんと希望を持たせる、そんな作品でした。
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/11/29
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