オレ的印度映画祭り!その3〜『命ある限り』はとってもいい話な恋愛ドラマだった!

■命ある限り (監督:ヤシュ・チョプラ 2012年インド映画)


「うーん、インド映画一気観しようとは思ってたけど、恋愛映画かあ、ちょっと苦手かもなあ…」と思いつつDVD再生し始めたら、なんとオープニングはいきなり映画『ハートロッカー』もかくや、と思わせる爆弾処理の場面から始まって、一気に物語に引き込まれます!主人公はインド陸軍所属の爆弾処理班サマル(シャー・ルク・カーン)。彼は防護服も身に付けず爆弾処理をする命知らずの男です。そんな彼が休暇で訪れた美しい湖(ここがなんとインド映画『きっとうまくいく』クライマックスで登場したインドのジャンムー・カシミール州東部の地方、ラダック!…だと思う!)で、偶然一人の女性アキラ(アヌシュカ・シャルマ)を助けることから物語は始まります。

アキラはサマルが忘れていった日記をこっそり読んでしまうのですが、そこに書かれていたのは、かつて若きサマルが、イギリスで出逢い恋をした富豪の娘ミラ(カトリーナ・カイフ)との、燃え上がるような日々と悲劇的な別れだったんですね。映画ではロンドンを舞台にしたサマルとミラとの恋の行方が再現されます。富豪の娘っていうぐらいですからミラさん、身持ちは固いです。映画ではラブシーンもありますが、性的な表現は御法度なインド映画にしては結構頑張ったんではないでしょうか。それと同時に、性的な描写が薄いからこそ逆に、プラトニックな思いの盛り上がり方が半端なく美しいし、切なさを盛り上げるんですね。控え目ながらインド映画らしい歌と踊りが二人の熱い思いを物語る部分もいいですね。

そんな二人はあることがきっかけで別れねばならなくなるんですが、ここで登場する宗教観のありかたに欧米とは違うものを感じました。なーんてんでしょう、一応ここで扱われるのはキリスト教なんですが、「君たち本当はヴィシュヌとかシヴァの話してない?」とかちょっと思ってしまった!そしてサマルはそのあまりに切ない別れから、命知らずの男となってしまった、というわけなんですよ。TVディレクターを目指していたアキラは、サマルのドキュメンタリーを撮ろうと彼に近づきますが、それと同時に、サマルに恋をしている自分にも気づくんですね。おしとやかなミラと対比的に、アキラの開けっ広げで元気いっぱいのキャラがまたいいんですね。

そして完成したドキュメンタリーを放送する条件として、アキラはTV局からサマルをイギリスに呼び寄せるように言い渡されますが、それはサマルにとって、辛い思い出の残る土地にもう一度足を踏み入れねばならない、ということでもあったんですよ。ここから巻き起こるもうひと波乱は、タイトル『命ある限り』の意味がきちんと生かされたドラマなんですよ。恋愛ドラマとしては、お約束過ぎる展開やちょっとクサいシーンもあることはあるんですが、インド映画らしい楽天性が、この物語を悲劇だけの辛いドラマに決してしていないという部分も観ていて安心できましたね。そして『スラムドッグ$ミリオネア』のあのA・R・ラフマーンの音楽が物語をとことん盛り上げてゆくんですよ!観終わって最後にしみじみと「いい話だったなー!」と思える、そんな素敵な恋愛映画でした。

命ある限り [DVD]

命ある限り [DVD]