火星から来たビロビロのアレはとっても締まりがキツかったッ!?〜映画『ライフ』

■ライフ (監督:ダニエル・エスピノーサ 2017年アメリカ・イギリス映画)


火星で発見された微生物が宇宙ステーション内で成長し乗組員を襲う!というSFパニックスリラー映画『ライフ』でございます。しかしこのタイトル、原題そのままなんですが何とかならなかったんでしょうかね。オレは最初「ベン・スティラー主演映画『LIFE!/ライフ』の宇宙篇なのか?」と思っちゃいましたよ。邦題が何かと取り沙汰される昨今ですが『襲来!恐怖のクラッシャーモンスター!』とか『実験ナンバーX:火星から来た殺人クリオネとかなんとかインチキ臭いタイトル適当に付けちゃえばよかったのに。

お話は火星で微小な生命体が採取される所から始まるんですよ。これが地球軌道上の国際宇宙ステーションに持ち込まれ調査研究されることになる。その細胞は次第に成長してゆき、「世紀の大発見だ!」と大いに沸いたのも束の間、その生命体は乗組員を襲いラボを逃げ出し、他の乗組員も一人また一人と餌食にされて行っちゃう、というもんなんですね。乗組員たちは生命体を撃退し生き残ることが出来るのか!?というのが物語となります。出演はジェイク・ギレンホールレベッカ・ファーガソンライアン・レイノルズ真田広之

宇宙ステーションという閉鎖空間でのモンスターとの追いかけっこといいますとどうしてもあの『エイリアン』を思い出しちゃいますな。それとかショーン・S・カニンガム監督の深海ホラー『ザ・デプス』ね。でもねー、オレはむしろこの映画、深作欣二監督が1968年に撮った東映映画『ガンマ―第3号 宇宙大作戦』に一番近いんじゃないかと思ったんですよ!『ガンマ―』も宇宙で発見されたゲル状の生命体が成長し宇宙ステーションの乗組員を襲う、というものでしたからね。他にも地球軌道上の宇宙ステーションが舞台という事で『ゼロ・グラビティ』を思わせるシーンも多かったですね。

確かに『エイリアン』その他のSFスリラー・クローンと言えばそれまでなんですが、このジャンルの作品としてはそれなりに面白いことをやっていたんじゃないでしょうか。まず他の「宇宙生物パニック物」と違って、搭乗するモンスターがクラゲみたいなビロビロの半透明生物で、攻撃方法も最初は強烈な力で締め付けたり口から体内に入ったり、見た目通り軟体生物的なんですよね。いやービロビロで締りがキツイとかって相当下品ですね(オレが)。で、軟体生物ならではの神出鬼没な隠れ方や出現の仕方が新鮮だったと言えるかな。しかもコイツ、宇宙空間でも生きられるし、火は苦手みたいだけど決して焼け焦げたりはしない、という強靭な生命力を持ってるんですね。

そういったモンスターパニックSFとしてはまあまあ頑張ってはいるんですが、いかんせん設定やシナリオや登場人物の描き方がどうも拙くてねー。まず最初検疫室に隔離状態で研究されてたのに結果的にそこから抜け出せたって、いったいどんな検疫室なんだ。さらに宇宙ステーションの外に出されてもまた内部に潜り込めるっていったいどんなスカスカな構造の宇宙ステーションなんだ。これはアリなのかなあ実際そんなもんなのかなあ。まあ『アンドロメダ...』の宇宙ウィルスだって厳重な隔離施設から漏洩しちゃったぐらいだからなあ。

それとやはり登場人物キャラに魅力が無くてさー。ジェイク・ギレンホールスティーヴ・カレルにしか見えないし最後のほうなんてエスパー伊東に見えちゃうぐらい精彩に欠けてたしライアン・レイノルズはなにかやってそうに見えてなんにもやってないし真田広之は日サロで焼き過ぎたみたいな顔してるし、一番最悪だったのがレベッカ・ファーガソン演じる検疫官で、冒頭から「私は検疫官!私の指示には従って!」とブイブイ言ってたくせに結局あらゆる検疫体制がぜ〜んぶ突破されてしまうという無能ぶりが露呈して「こいつ何の役にも立ってないばかりかいるだけ邪魔な疫病神キャラじゃないか」と呆然としてしまいましたよ。

これらは俳優のせいというより全ては演出の拙さで、結局監督が力足らずだったってことじゃないの。結構いい俳優揃えているのに結局B級SFの域から出られなかったというのもこの監督のシャープさに欠けるモヤっと暗い画面作りにあったんじゃないかな。とはいえ、あれこれ書いたけど駄作凡作と貶めるほど悪い作品でもなくて、B級SFだからと割り切って観るなら楽しめるよ。なおこの映画で最も緊張しなおかつ期待が高まったのはAEDのシーンだったという『物体X』マニアはオレだけではあるまい!


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