俺が殺らなきゃ誰がやる!?〜『暗殺者の正義』マーク・グリーニー著

暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)

“グレイマン(人目につかない男)”と呼ばれる暗殺者ジェントリーは、ロシア・マフィアから、悪名高いスーダンの大統領の暗殺を依頼された。だがCIA時代の上官が現われ、意外な提案をする。大統領を暗殺するふりをして拉致せよ。成功すれば、今後命を狙うことはないというのだ。彼はロシア・マフィアの依頼を受けたように見せかけてスーダンに赴くが、次々と思わぬ事態が!『暗殺者グレイマン』に続く傑作冒険アクション。

伝説の暗殺者、コートランド・ジェントリー・シリーズの第2作です。前作は読んでないんですが、解説によるとかつて彼はCIA工作員で、しかしある事件が発端で解雇され抹殺指令まで下されてしまうんですね。そんな訳で身を隠しながら暗殺屋稼業を営む彼なんですが、その信条は"道義的、ないし正義の為の殺し"しか行わない、というものなんですよ。翻訳版タイトルが『暗殺者の正義』なんてなってますが、要するに殺し屋のくせして正義がどうとか能書きを気にする主人公なんですね。殺し屋ってクールでニヒルで非人間的なイメージがありますが、この彼の場合は殺し屋というよりは闇の世界の正義のヒーローって感じなんですね。まあそんなヤツですから当然のことながらタフでマッチョで気が優しくて力持ちなわけなんですよ。おまけに結構人情家だったりするんですよ。変な暗殺者ですね。
そんなもんですからこのコートランドさん、伝説の暗殺者のくせになぜか冒頭からチンピラ相手に苦戦してたりします。いいのかオイ。ホントに伝説の暗殺者なのかオイ。で、ロシアン・マフィアにスーダン大統領暗殺を依頼されるんですが、「いや、依頼者はマフィアだけどスーダン大統領って酷い奴だから殺すのは結果的にいいことだから」とか自分に言い聞かせて仕事引き受けるんですね。そしたらかつてのCIAの上司から「殺さないで拉致って俺らの所に連れてくればあんたの抹殺指令取り下げるから」とか持ち掛けられてこっちもOKするんですね。意外と節操無い奴なんですねこの伝説の暗殺者。というわけでスーダンに向かうんですが、途中着陸した現地の空港で厄介事に巻き込まれていた跳ねっ返りの女を助けたばかりに計画が脇道にそれてしまい、いらない戦闘といらない死体をあたりにばら撒く伝説の暗殺者なんですね。ホントお節介焼きな暗殺者もあったもんですね。
まあしかしこの中盤までは多分時間持たせというか枚数稼ぎだったと思うんですね。いよいよスーダン大統領拉致作戦開始!となったところから、予期せぬ事態が次々と起こり、危機また危機の連続、アクションに次ぐアクション、銃撃に次ぐ銃撃の、畳み掛けるような展開が待っているのですよ!ぶっ殺してもぶっ殺してもわらわらと湧いてくる敵兵との息つく間もない戦闘はもはや『ブラックホーク・ダウン』状態!でも主人公もランボージョン・マクレーン入ってるダイハード野郎ですから容易くやられや致しません!物語は最後までどんでん返しが続き、一気呵成にラストまで読み終わっちゃいました!ちょっと乱暴というか突っ込み所ありというか粗い部分もあるっちゃああるんですが、エンターティメントした爽快冒険アクション小説としちゃあ格好の出来だと思いますよ!

暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)

暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)