■長ぐつをはいたネコ (監督:クリス・ミラー 2011年アメリカ映画)
- ドリーム・ワークスのCGアニメ『シュレック』のスピン・オフ作品『長ぐつをはいたネコ』です。実は『シュレック』って3作全部観てない程度に思い入れの無い作品なんですが、劇場予告で観た主人公ネコちゃんのあまりのもふもふ具合にヤラレてしまい、これは観に行かねば、とわざわざIMAX3Dで視聴しました。
- 主人公である"長ぐつをはいたネコ"ちゃんの名前はプス(これってネコを呼ぶときにあちらの国の人が「プス、プス」ってやるからなんでしょうかね)。彼はサーベルを腰に下げ、帽子に長靴、マント姿のお尋ね者。このプスが、かつて仲違いした親友ハンプティ・ダンプティ、謎の雌ネコ・キティと共に、黄金の卵を産む鳥が居るという天空の城を求め冒険の旅に出る、というものなんですね。
- この天空の城へ行く為に、流れ者のジャックから魔法の豆を奪おうとするのですが、これは御伽噺「ジャックと豆の木」からの引用になっているんですね。『シュレック』も様々な御伽噺の引用で成り立っている部分がありましたが、この『長ぐつをはいたネコ』もそれを踏襲しているのでしょう。
- 見所はキザな台詞と立ち振る舞いのプスが、実際のところネコちゃんでしかない部分のギャップの面白さでしょう。酒場に立ち寄っても頼むのはミルクで、それをネコちゃんらしくペチャペチャ舐めてるんですね。あと、壁や床に小さい光がチラチラ動いてると、それをどうしても捕まえたくなってクルクル回っては肉球でぺしぺし叩いちゃうんですよ。さらにいつもは渋い低音の声で喋ってるのに、何かの拍子で「にゃあにゃあ!」とネコ鳴きしてしまうんです!こういった描写ってネコが好きだと堪らなく愛くるしく感じてしまいますよ。CGでもふもふに描かれた毛並みも実にもふもふで、危機に至るとつぶらな瞳で人間を見上げ、その愛らしさで虜にして危機を脱するなんていうのも可笑しかったなあ。
- 相棒となる謎の雌ネコ・キティとのやりとりはほのかなロマンスを伺わせますが、この彼女とのダンス対決シーンも楽しかったですね。ただ、CGですから綺麗にシンクロするのは当たり前なんですが、もう少しネコ的な柔らかい動きも入れてもらえば完璧だったかも。
- そしてフィーチャーされている「ジャックと豆の木」のエピソードもよかったですね。子供の頃この物語が大好きだったものですから、ある意味後日談的な扱いになっているとはいえ、天まで伸びる魔法の木に登って天空の城へと入りこむシーンはとてもファンタジックで胸躍りました。そしてこの魔法の豆を持つジャックとその奥さんというのが荒くれ者という設定で、そのジャック夫妻とプス一行とのアクションが物語を盛り上げるんですね。
- ただ問題はもう一人の仲間ハンプティ・ダンプティなんですよ。いくら御伽噺の引用で成り立っている『シュレック』の世界観の中にある映画とはいえ、この卵野郎がなんだかとても異質に見えてしまうんです。ある意味シュールだし、見方によってはキモいヤツなんですよ。
- 物語はプスとこの卵野郎との長きに渡る愛憎と確執とが主軸になっているのですが、この卵野郎のやっていることってどうもチグハグだし回りくどいし、卵野郎の持つ"動機"の説明はどこか矛盾しているし、このキャラの造形と立ち位置の設定の拙さが、結局物語を観終わった後に「なんなのこれ?」というもやもやしたものを残してしまうんですよね。そういった部分でのシナリオの練りこみ不足が残念に感じました。
■長ぐつをはいたネコ 予告編
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