プロセキューター (監督:ドニー・イェン 2024年韓国・中国映画)

『プロセキューター』は、アクションの帝王ドニー・イェンが監督・主演・製作を兼ねた香港発の法廷アクション大作だ。元刑事のフォク(ドニー・イェン)が、証拠不十分で悪党を逃した悔しさから警察を辞め、検事へと転身。7年後、貧しい青年が麻薬密輸で有罪を認めた事件に疑問を抱き、独自捜査を始める。やがて弁護側と黒社会の癒着、検察内部の圧力という巨大な陰謀が浮上し、真実を暴くために命を賭ける――というストーリー。2016年の実在の香港麻薬密売事件をモデルにしている。
共演にはマイケル・ホイ、フランシス・ン、ケント・チェン、ジュリアン・チョンら香港映画の重鎮や次世代俳優が揃い、アクション監督は大内貴仁が担当。日本のスタントチームA-TRIBEも参加し、国際色豊かなクオリティを実現している。
正直、最初に「ドニー・イェンが監督で、しかも検事役!?」と驚いた。『イップ・マン』シリーズや『ジョン・ウィック』で知られる彼が、法廷を主戦場に据えるなんて想像もつかなかったからだ。
“大暴れする検事”というコンセプトは確かに破格で、非現実的極まりない。検事が銃を奪って撃ちまくり、敵を蹴散らすなんて、現実の司法ではありえない。でも、それが逆に新鮮。従来の「正義の警官」や「正義の弁護士」フォーマットから外れ、法律の専門家が自ら身体を張って正義を追求する姿は斬新だ。この非現実性も、法廷シーンで裁判官から「検事はこんなことしない」と指摘されることで巧みにメタ的にかわしており、観客を納得させる工夫が光る。笑えるほど上手い。
物語の構成は捜査と法廷シーンが中心で、ドニーのアクションはそれらの間に挟まる形。純粋なアクション映画を期待すると物足りなく感じるかもしれないが、逆にそのアクションが短くても強烈で、最高のメリハリを生んでいる。アクションシーン自体は大内貴仁の手腕が炸裂し、世界基準のクオリティ。オープニングの警察突入シーンはPOV(一人称視点)演出で没入感抜群、まるで自分がドニー・イェンになった気分になる。銃撃と格闘が融合したアドレナリン全開の乱戦は、ゲームのようなダイナミズムで圧倒的だ。
何より素晴らしいのはアクションの「意味づけ」。フォク/ドニーさんは決して「力による正義」ではなく、あくまで「法律に則った正義」を模索し、アクションはその障壁を排除するための手段として描かれる。この構造が非常に真摯で、心に響く。悪役のギャングたちは本当に凶悪で身の毛もよだつ描写が多く、現実の社会問題を反映した生々しさがある。弁護士や検事すら信用できない司法の腐敗、社会の困難さを浮き彫りにしつつ、そんな絶望の中で「正義とは何か」を問い続けるドニーさん演じるフォクの姿勢に強く打たれた。
それにしてもドニーさん、相変わらず渋くてカッコいい。スーツ姿の知性派検事から、一瞬で戦闘モードに切り替わるギャップなんて最高じゃないか。アクションと社会派ドラマのバランスが絶妙で、香港映画の新たな波を感じさせる良作だと感じた。アクションファンも法廷ドラマ好きも、ぜひ体感してほしい一作である。
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