ボスニア内戦をテーマにした『カーラのゲーム』は熱い冒険小説だったッ!!

■カーラのゲーム(上)(下) / ゴードン・スティーヴンス


カーラのゲーム〈上〉 (創元ノヴェルズ) カーラのゲーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)
熱いぜ熱いぜ熱くて死ぬぜ!ゴードン・スティーヴンスの『カーラのゲーム』はメチャクチャ熱い小説だったぜ!物語はまずイギリス・ヒースロー空港を目指すハイジャック機から始まるんだぜ!乗っ取り犯リーダーは一人の女、彼女の名はカーラ。実は彼女は壮絶なまでに悲劇的な過去を背負っていたんだぜ!

遡ること1994年、悲惨な内戦の続く冬のボスニア、カーラはそこで出兵した夫を待ちながら、お腹を空かせた我が子に配給食を与える為、スナイパーが待ち構える橋を今日も死を賭けて渡るんだぜ!いつ終わるのかも定かではない内戦、瓦礫と化した町、昼夜をおかず降り注ぐ砲弾、死と隣り合わせの日常、寒さと飢え、その中でカーラは、生きていたい、子供を死なせたくないと必死に祈りながらも、絶望的な毎日を生きざるをえなかったんだぜ!

もうこの冒頭からオレの胸は鷲掴みだぜ!死の恐怖に怯えながらも、それでもその不確かな生に精一杯しがみつこうとするカーラの願いが、ビンビンにオレの胸を熱くさせたぜ!そしてそこで描かれる戦争の悲惨さ不条理さは、どこまでもオレの胸を苦しくさせたぜ!鷲掴みされたり熱かったり苦しかったりとオレの胸も忙しいぜ!なにしろこの前半の感情の揺さぶられ方は半端じゃなかったぜ!メーターで言うとレッドゾーン振り切ってるって感じだったぜ!

その後起こってはならない悲劇が起こり、カーラの人生は最悪のものとなってしまうんだぜ!オーマイガッ!そしてカーラは決意するんだぜ!国連さえロクに動こうとしないこの惨状を世に知らしめなければいけない!このボスニアの悲劇を止めなければならないと!そしてカーラは、テロリストにスカウトされちゃうんだが、この辺からいきなりカーラが訓練をすっかり積んだ冷徹なテロリストになっちゃう展開は、ちと強引に感じたかな。

そして物語中盤は、このテロリスト組織を追う各国政府の特殊機関の活動が描かれるが、ここいらがなんだか平凡で、熱くなったオレのココロはちょっぴりションボリだったぜ。しかーし!カーラがハイジャックに及ぶ後半からまたもや大盛り上がりだッ!ハイジャック犯カーラの要求、それはボスニアに平和をもたらせ、ということだったんだッ!だがヒースロー空港に着陸したカーラを迎えるのは強行突入の指令を待つイギリス最強の陸軍特殊部隊SAS!さあカーラの運命はいかに!?

凶悪犯罪であるハイジャックと平和を願う心、というアンビバレンツが、逆にギリギリのことをしなければ決して覆されない現実の無力さ皮肉さを浮き彫りにしてオレの胸は(以下同文)!ラストは大甘だったけど、これはこれでいいんじゃないかな!熱いぜ熱いぜ熱くて死ぬぜ!永らく積読にしていたちょっと古めの冒険小説だったがオレはもの凄く楽しめたぜ!