映像夜間中学講義録 イエスタディ・ネヴァー・ノウズ(DVD付)
- 作者: 根本敬
- 出版社/メーカー: K&Bパブリッシャーズ
- 発売日: 2009/03/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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我々人類が、地球が、宇宙が、とにかく森羅万象、この世に存在するものに意味はない。だが、しかし、理由は、どんなとるに足らない瑣末な事にも必ずあるのだ、とね。(P66)
偶然が降りかかって来れば来る程、行き着く先は天国でも地獄でも、構わないけれど、とにかくそれは「合格」なんだよ。通過点かもしれないけれど、「今、いるべき場所」なんだと思う。(P66)
つまり、「この世に存在するもの総てに確固たる『理由』はあるけど、しかし、『意味』は不確定である」って事。絶対コレだって意味は決まっちゃいないんですよ。
だから、事実イコール、真実ではないし、真理はそれこそ、幻のブルースでね、♪あ〜追えば追うほど〜 ああ〜、あなたは逃げる〜 って、そういうもんですよ。(P92)
(不可解な偶然の連鎖、根本言うところの"因果"の引力に囚われるような出来事を指して)自分が、ある『数』の帳尻合わせの圏内に足を踏み込んでないか、そういう事を識るのも大切だ。だけど、頭、頭だけで考えてもつかみ取れない感覚の世界だな。
だから云うワケですよ、「無意識を鍛えろ」ってよく。(P106)
『特殊漫画家』根本敬が8年に渡り続けてきた『根本敬の映像夜間中学』を、"ざっくばらんにワザワザ「1回分」に編集したもの"である。根本お得意の"ちょっとイイ"因果話、世の中のダメなもの、クダラナイもの、カスみたいなものの話を積み上げ、この宇宙の底に澱のように溜まって出来た暗黒物質のような、こんぐらがって出来てしまった固い糸の結び目のような、そんな"因果"の『理由』を、根本の描く漫画のようにグジャグジャドロドロと考察してみた本なのである。
根本の語る"講義"を活字に起こしたものなのだが、話は飛び話は戻り、唐突な話題と極端な話題がパッチワークされ、これがまたあたかも複雑骨折のレントゲン写真を見せられているかのようにグジャグジャドロドロとした文章として成り立っている為、日本語としておそろしく読解し難い部分もある。だがしかし、『意味』『理由』『真実』『真理』について語ろうするとき、それを単純で口当たりの良い言葉だけを並べ言い表してしまう表現など嘘くさいだけだろう。根本はそれらを、糞便の中から拾ったトウモロコシの粒を観察するかのように言葉を並べ考察してゆく。それは汚穢に満ち饐えた臭いを放っているけれども、しかし生の生々しさに限りなく近い言葉であることもまた確かなのだ。ただしシュールストレミングのように強烈に醗酵した文章でもあるので、読む人間を選ぶから要注意。
なお、この本には『男・友情の小さな旅/EVE』という特典DVDが付いている。横浜ドヤ街に住む"イイ顔の親父*1"のダウナーかつアシッドな生態を記録したこのDVDは、鳴門の渦を眺めていたらその中に吸い込まれる錯覚に囚われてしまうかのような、軽い虚無感と神経麻痺作用を起こすドラッギーな映像なのでこれも要注意である。
*1:根本用語。動物的だったり生々しかったりする、あたかもパンツの中身みたいな顔のことを言う。決してタレントのような美顔を言うわけではない