インド2大スター、シャー・ルク・カーンとディーピカー・パードゥコーン共演による大アクション作『PATHAAN パターン』

PATHAAN パターン (監督:シッダールド・アーナンド 2023年インド映画)

ボリウッド映画界を代表する大スター、「キング・オブ・ボリウッド」ことシャー・ルク・カーンと、カンヌ国際映画祭レッドカーペット常連のインド名女優ディーピカー・パードゥコーンが主演を張り、大ヒットアクション映画『バンバン!』『WAR ウォー!!』のシッダールト・アーナンドが監督を務めたアクション大作『PATHAAN パターン』が遂に日本でも公開されると聞いたらかつては大のインド映画ファンだったオレも黙ってはいられない。しかも今回はIMAX上映あり、『RRR』の超絶的ロングランを記録した日本でもインド映画人気の追い風となるか!?と楽しみにして観に行くことにした。

【物語】インドやパキスタンにまたがるカシミール地方の自治権をインド政府がはく奪し、それに怒ったパキスタンの将軍カーディルは、元インド軍人のジムと手を組みテロ攻撃を企てる。インドの諜報機関RAW (Research Analysis Wing of India) に所属するパターンは、ジムが計画する生物兵器での攻撃を阻止するため動き出すが、デリーの上空を飛行中の飛行機に生物兵器が仕掛けられたことが判明。残された時間はわずか6分という絶体絶命の状況下で、インド最高のエージェントであるパターンは、母国を守るため奮闘する。

PATHAAN パターン : 作品情報 - 映画.com

シャー・ルク・カーンとディーピカー・パードゥコーンがタッグを組んだインド映画と言えば『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』『チェンナイ・エクスプレス~愛と勇気のヒーロー参上~』そして『ハッピーニューイヤー』(Netflixで視聴可)などどれも名作良作揃い、今作『PATHAAN パターン』でもその相性はぴったりで、この二人の大スターがスクリーンに並び立つ姿を観られるだけでも既に眼福、インド映画鑑賞冥利に尽きるというものだ。しかも今作は今まで無かったことが不思議なぐらいガチなアクション作での共演、シャールクのアクションは鉄板として、ディーピカーがハリウッド進出作『トリプルX:再起動』で魅せてくれた華麗なるアクションを再び体験できるとは、これはもう狂喜乱舞と言わざるをえない。

さらに今作、なんと「スパイ・ユニバース」なるボリウッドスパイアクションのマルチ展開作品の一つとなるらしいではないか。いわゆるハリウッド・スーパーヒーローによるMCUやDCU、さらにはゴジラキングコングが登場するモンスターバースに倣ったボリウッドスパイ映画ワールドを形成するという目論見なのだろう。それはサルマーン・カーン主演映画『タイガー 伝説のスパイ』におけるインドスパイ・タイガー、さらにリティク・ローシャン主演映画『WAR ウォー!!』のカビール少佐が一堂に会した作品群となるらしく、この「スパイ・ユニバース」の一環として現在「タイガー」の3作目、『WAR ウォー!!』の続編、そして『タイガーVSパターン』なる作品が製作中であるのらしい。お願いだから全部日本で公開してね!

さてこの『PATHAAN パターン』、映画としてはどうだろう。個人的に現代的なボリウッド・アクション映画の最高傑作はアーミル・カーン主演映画『チェイス!』、その次にタイガーシリーズ2作目『Tiger Zinda Hai』、その次が『バンバン!』もしくは『WAR ウォー!!』あたりが来ると思っているのだが、これら秀作と比べるなら『PATHAAN パターン』はまずまずの及第作、と言う事になるだろう。インドアクションあるあるなのだが、ド派手だが一本調子で大味な部分があることは否めない。アクションにしても他作品で既に観たことがあるような、新鮮味に乏しい場面が多く感じた。こういった点で監督シッダールト・アーナンドの手駒の数の少なさが気になってしまう作品ではあった。

とはいえ冒頭のヘリ強奪シーンのちょっと笑ってしまう展開は掴みとしてバッチリだったし、ロシアでの金庫襲撃シーンはオチャラケだった『ハッピーニューイヤー』の金庫襲撃シーンを遥かに超えて斬新だった。致死性の病原菌を巡る攻防という物語は、これもコロナ禍の後だけにリアリティを強く感じさせた。むしろシッダールト・アーナンドは定石的なアクションよりも『バンバン!』で見られたような奇想天外である意味馬鹿馬鹿しいぐらいのアクションのほうで本領を発揮する監督なのではないかと思えた。今後の「スパイ・ユニバース」展開においてはもっと力の抜けた奇想天外さを期待したい。

という訳でインド映画『PATHAAN パターン』、若干辛い点も付けたが本当の見所はやはりシャールクの雄姿であり、最近日本でも公開された『ブラフマーストラ』でも大いに見せつけらた水も滴るイケオジぶりである事は間違いない。併せてディーピカーの類稀なる美貌と匂い立つような魅力は言うに及ばず、このインド映画大スター二人のカリスマ性をとことん堪能できる作品として、むしろインド映画に馴染みのない方にこそお勧めしたい作品である。ちなみにタイトルにある「PATHAAN/パターン」は英文のpatternとは関係なくパシュトゥーン人アフガニスタンパキスタンに居住するイラン系民族)のことであり、主人公パターンの出自を指すのと同時にコードネームでもある。

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