『MEG ザ・モンスターズ2』は話が雑過ぎて頭に入ってこないほどのトホホ作だった

MEG ザ・モンスターズ2 (監督:ベン・ウィートリー 2023年アメリカ・中国映画)

なんだか訳が分からないぐらい巨大な鮫が襲ってくる!?その正体は200万年前に絶滅していたはずの巨鮫メガロドン、通称メグ!メグだからって決して魔女っ娘なんかじゃない!?狂暴で神出鬼没のモンスター・メグの襲撃に入れ食い状態で命を落とす人間の皆さん!しかーし!そこである男が立ち上がる!ある時はワケアリ荷物運搬人、ある時は刑務所のデスレーサー、ある時は消耗品部隊員、ある時は走り屋ファミリーの味噌っかす、そして今回は潜水レスキュー!そう、彼の名はジェイソン・ステイサム!?

【物語】潜水レスキューのプロ、ジョナス・テイラーは、海洋調査チームとともに地球でもっとも深いとされるマリアナ海溝へと潜り、人類未踏の約10キロの深海へと向かう。そこで彼らは謎の生命反応を探知し、触れてはならない恐怖を目覚めさせてしまう。それは見たこともない大きさとどう猛さで生態系の頂点に君臨する巨大ザメ=MEG(メグ)の群れと、さらなる巨大生物たちだった。それらはやがて深海からビーチにまで襲来し、テイラーたちは絶体絶命の危機に陥る。

MEG ザ・モンスターズ2 : 作品情報 - 映画.com

という訳で鮫映画『MEG ザ・モンスター』の続編『MEG ザ・モンスターズ2』でございます。なにしろ男ジェイソン・ステイサムがその剛力で血に飢えた巨大鮫を捻り殺す、というとんでもない映画であります。映画俳優ドニー・イェンは宇宙一強い男という異名を持ちますが、さしずめジェイソン・ステイサムは深海一強い男ということができるかもしれません。多分深海を統べるDCヒーロー、アクアマンとタイマン張っても勝てる気がします。前作では1匹のメグを血祭りに上げたステイサムですが、今作では複数のメグ、さらには訳の分からない古代生物もお友達として同伴してきますが、1匹だろうが10匹だろうが深海の覇者ステイサムの敵ではありません。ってか人間離れし過ぎだろステイサム!?

とまあそんな映画ではありますが、正直に申しましてそんなに面白くありません。実の所、1作目自体がそんなに面白くない映画だったんですけどね。いや、ステイサムはいいんですよステイサムは。ステイサムだけ見ていれば楽しい映画なんです。ただねえ、シナリオと配役がねえ。1作目もそうなんですが中国資本が入っておりまして、そのせいで映画として非常にグズグズなんですよ。中国それ自体を揶揄するつもりはこれっぽっちもありませんが、こと中国映画、中国資本の入った映画は大味で大袈裟で大雑把で中国推しノイズが多くて配役が薄っぺらいものを多々見掛けるのですが、このシリーズもその最たるものでしょう。

まあ鮫映画如きに多くのものを求めるつもりもありませんし、むしろそのチープで即物的な内容にこそ面白さがあるのでしょうが、この『MEG ザ・モンスターズ2』、なにしろお話が雑過ぎる。単純極まりないお話の筈なのに、雑過ぎることが気になって気になって逆になんの話をしているのか途中で訳が分からなくなってきた程です。いや、科学的な適当さはいいんです、そういうのはノリですから。7000メートルの深海を徒歩で踏破しようとしたっていいんです、水圧の事も大目に見ましょう。オレだってそんな科学詳しくないし。この深海シーンはそれなりに緊張感もありVFXもよくできていてとりあえず見られるものとしては出来ているんです。

でも海洋調査プロジェクトの洋上基地で汚い陰謀が進行していたのは分かったんですが、後からなんであんなに傭兵が湧いて出てくるのでしょうか。ショッカーじゃあるまいし深海の謎の基地ってなんなんでしょうか。あんなに派手に人殺しておいてバレずにビジネスできると思ってたんでしょうか。海岸リゾート地のアホな客どもはあまりにアホ顔過ぎて緊張感を削ぎ、逃げることもせずにモンスター殺戮要員となるだけです。そしてステイサムはいったい何の義務感から徒手空拳でモンスターとタイマン張りますか。さっさと逃げて軍隊呼びましょうよ軍隊。

ウー・ジンはいつも薄っぺらい笑顔を浮かべてまるで人格を感じさせない単なる「イイ人」を演じているだけで、おまけにたいしたアクションらしいアクションもさせずウー・ジンの無駄使いとしか思えません。しかしウー・ジンとステイサムが前作から出演している子役少女ととってつけたような家族ごっこを演じるドラマはひたすら退屈です。なにより大問題はこの子役少女で、彼女の存在が物語に何一つ寄与していないんです。いてもいなくてもいっしょなんですよ。画面に出ていても右往左往するか余計な邪魔をしてくれるかぐらいで、映画の間中「こいついったい何のためにここにいるんだ?」と相当に苛立たせられました。

さらに、後半からはメグが沢山出てくるのですが、スケール感がまるで計算されておらず、古代巨大鮫メガロドンのはずなのに途中からその辺のホオジロザメが暴れ回っているのとたいした違わない大きさにしか見えないんです。いやーいったい何だったんでしょうか。これならまだアサイラムあたりの低予算Z級鮫映画のほうが期待値も低い分楽しく笑いながら観られたかもしれません。