オペレーション・フォーチュン(監督:ガイ・リッチー 2023年イギリス・アメリカ映画)
ジェイソン・ステイサム、いいっすよねえ。なんといっても外人部隊の軍曹みたいなあの凶悪な顔つきがいいんですよ。ステイサムが好きすぎて主演映画全視聴に挑戦したぐらいですが、途中からどれ観たのか分かんなくなって止めちゃったぐらいにはステイサムにハマってました。それにしてもオレの好きな俳優ってダニー・トレホとかマ・ドンソクとかこのジェイソン・ステイサムとか全員凶悪そうな顔した俳優ばっかりですねえ。やっぱり男は凶悪な顔してナンボ。そういうオレの顔つきは凶悪というよりは今日も明日もワカラナイ、って感じの顔ですが(なんじゃそれ)。
そんなステイサムですが最近なんだかパッとしないんですよ。まず『MEG』シリーズがダメだったのと、『ワイルドスピード』シリーズも、悪かァないんですが主役張ってるわけじゃない。近作でピンの出演だと2021年公開の『キャッシュトラック』ぐらいですが、これがまた十分面白かった。やっぱりステイサムはピンでナンボですね。で、その『キャッシュトラック』監督であるガイ・リッチーとステイサムがまたもやタッグを組んで製作したのがこの『オペレーション・フォーチュン』なんですね。ガイ・リッチー+ステイサム映画って『ロック・ストック&スモーキング・バレルズ』『スナッチ』『リボルバー』となかなかにイイ味出している作品が多いので今作も楽しみして観に行きました。
《ストーリー》俺の名はオーソン・フォーチュン、自分で言うのもなんだがMI6きっての凄腕エージェントだ。今度の俺の任務は100億ドルで闇取引されている「ハンドル」とか言う名の謎のブツを追跡・回収すること。まあ俺にとっては朝飯前だ。とはいえチームメンバーは新参者ばかりだし、MI6の別動隊が俺の邪魔ばかりしやがるのが気に食わねえ。そこで俺は作戦を練り、ハリウッドのアホ面したスターをたらしこみ、「ハンドル」取引に関わっている億万長者武器商人に近づくことにした。この武器商人、アホ面スターの大ファンなのだ。俺の作戦にぬかりはねえ。さあ、一発かましたるでえ!
とまあそんな具合に、今作でのステイサムの役どころはイギリス諜報部の凄腕スパイなんですね。言ってみれば007の向こうを張った、ステイサム版ミッション・インポッシブルという訳なんです。007とミッション・インポッシブル、今や映画界の大人気スパイシリーズですが、そこは何と言ってもステイサム+ガイ・リッチーですから、これらスーパーヒット娯楽大作と同じように事が進むわけがありません。なんと言っても粗雑で暴力的、ガサツで品が無い。ダニエル・クレイグやトム・クルーズのスマートさなんか微塵もなく、言わばチンピラがゴロツキとドツキ合っているような野蛮なアクションとなっているわけなんですね!
とはいえ蛮人ステイサムのサポート部隊が実にしっかりしていて、それによりきちんとしたスパイドラマの体裁を成しています。天才ハッカーのサラ(オーブリー・ブラザ)、新米スナイパーのJJ(バグジー・マローン)が脇を固め、物語が進むにつれ敏腕振りを発揮、演じる俳優たちもその魅力を見せてくれるんですよ。さらにガイ・リッチーらしい癖の強い脇役が嬉しくて、ハリウッド・スター役のジョシュ・ハートネットのそこはかとないアホっぽさ、武器商人グレッグを演じるヒュー・グラントの因業極まりない大富豪振りなど、観ていてニマニマの止まらない強烈なキャラクター作りが物語を大いに盛り上げてくれていました。
物語は「ハンドル」という名の謎のアイテムの奪取作戦が描かれますが、これはマクガフィンを巡る戦いという事なんですね。つまりマクガフィンそれ自体には意味が無くて、その奪取作戦の行程が物語の中心なんです。この作品においては大富豪にして武器商人のグレッグの存在が物語の中心的要素でしょう。このグレッグ、実は悪党や悪役といった立ち位置にいるわけではなく、むしろ掴み所のない人間性や大富豪ならではの特殊な行動原理を見せる部分で、奇矯で異様な存在感を放っているんですね。ここでグレッグは欧米の高度資本主義社会の行きつく先にある化け物としてカリカチュアライズされているんですよ。この「莫大なカネの生み出したイビツな化け物」をいやらしく描き出した部分に、ガイ・リッチー映画ならではの皮肉を感じましたね。
スパイドラマの定番としてロケーションは世界各地を経巡り、それぞれに風光明媚な光景を見せつけてくれるのも楽しかったですね。それとイギリス人監督ガイ・リッチーらしく洋服へのこだわりも強く、それぞれの俳優が着る洋服は眺めていて飽きない素敵なものがありました。とまあそんな『オペレーション・フォーチューン』でしたが、『キングスマン』みたくシリーズ化はあるのか?と一瞬考えたけど、ステイサム映画はシリーズ化されないほうが面白いんじゃないかな?