SF/ファンタジー映画に貢献したコンセプト・アーチストのアートワーク集『The Art Of Ron Cobb コンセプト・アーティスト ロン・コップの仕事』

The Art Of Ron Cobb コンセプト・アーティスト ロン・コップの仕事/ジェイコブ・ジョンストン(著)、高橋ヨシキ(訳)

The Art of Ron Cobb コンセプト・アーティスト ロン・コッブの仕事

本書はロン・コッブの仕事を作品(未製作を含む)ごとに紹介するアートワーク集です。初期〜最終デザイン画や設計図、スケッチ、ロゴなど、造形美と機能美を両立したロン・コッブのアートワークを多数掲載しています。また、彼の才能に信頼を置いたジェームズ・キャメロンロバート・ゼメキスポール・ヴァーホーヴェンなどの監督、作品づくりを共にしたスタッフたちによる多くの証言から、当時の制作状況や秘話、ロン・コッブの愛すべき人柄も浮かび上がる評伝的な側面もあります。

ロン・コッブ(1937-2020)は70~80年代のハリウッドSF/ファンタジー映画において画期的なアートワークを残してきたコンセプト・アーティスト/デザイナーである。彼の手掛けてきたデザインは映画ファンなら誰もが知るであろうものばかりだ。最も有名なのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンだろうが、もちろんそれだけではない。

ロン・コッブが最初期に関わった映画作品は『ダークスター』の宇宙船だ。そこから彼の華々しい映画デザインのキャリアが始まる。『スター・ウォーズEP4/新たなる希望』の宇宙酒場にたむろするエイリアン・モモー・ネイドン(ハンマーヘッド)、『エイリアン』のノストロモ号、『エイリアン2』のドロップシップと惑星アケロンの施設群、『レイダース/失われたアーク〈聖櫃〉』のナチス全翼機、『コナン・ザ・グレート』の多岐に渡るコンセプト・アート、『トータル・リコール』のリコール・マシーン、『アビス』の海底石油プラットフォーム……。

まだまだ存在するのだが、ここに挙げただけでも「おおっ!?」と身を乗り出してしまうではないか。それがこの『The Art Of Ron Cobb』に網羅され、手に取って眺められるというのだから、これはもう至福としか言いようがない。

ロン・コップはただ素晴らしいアートワークを手掛けたというだけではなく、それまでのハリウッドSF/ファンタジー映画におけるデザインの概念を覆した人物なのだという。それは機能性を感じさせるリアリズムと、それに沿ったイマジネイティヴな美意識を感じさせるデザインだ。SF/ファンタジー映画における新たなるコンセプト・アートの姿は『スター・ウォーズ』と『エイリアン』から始まったともいえるが、ロン・コップはそのパイオニアとなるデザイナーの一人であり、その後も多大なる偉業を成し、様々な影響を与えてきた「映画デザインの巨人」なのだ。