■エイリアン:コヴェナント (監督:リドリー・スコット 2017年アメリカ映画)
『プロメテウス』って映画あったじゃないですか、リドリー・スコットの。あれ、製作サイドからも『エイリアン』の前日譚だとか実はちょっと違うだとかなんだかゴニョゴニョした言い方されてて、どうも位置付けのはっきりしない作品だったんですよね。
でまあ実際観てみるととても『エイリアン』っぽいし『エイリアン』絡みのアレやコレやが出てきはするんだけど、「でもこれがどう『エイリアン』と繋がるの?実はやっぱり関係なかったりするの?」という独自すぎるストーリーだったんですよね。とはいえ、映画そのものはリドリー・スコットらしいひたすら美しい映像で描かれたひたすらエグイ話で個人的にはとっても大好きなんですが!
で、その続編とかいう話の『エイリアン:コヴェナント』観てきました。今度はタイトルに『エイリアン』って名前付いてるけど、またぞろ『エイリアン』正編とも実は『プロメテウス』とも関係ない別バージョン商売なんじゃないの?と相当疑ってたんですが、なんと観てビックリ。きちんと『プロメテウス』の続編になっているばかりか、正編の『エイリアン』にきちんと繋がる物語になっていたじゃないですか!?なんだリドリー・スコット、ちゃんと『エイリアン』正編憶えてたんだ?
物語内容についてはあれこれ詳しく書きません。2000人の冷凍睡眠状態の人間と1000体の人間の胚の乗せられた恒星間植民船コヴェナント号が宇宙空間で謎の電波を受信してチョイとその惑星に寄り道したら案の定エライ事になったという、プロット的には『エイリアン』第1作目とまるで変わらない物語だからです。あまりにも一緒なもんですから「ちょっと芸無さ過ぎじゃねえか?」と一瞬眉間に皺が寄りました。そんなこと言ったら『プロメテウス』も似たようなプロットでしたがね。
この芸の無いシナリオはその後もそのまんまで、結局ずっと『エイリアン』と『プロメテウス』の別バージョンを延々見せられているような気分になってきます。確かに「『プロメテウス』ラストで生き残ったあの人はどうなったのか?彼らが目指した「エンジニアの惑星」に辿り着けたのか?」の説明はあるし、「『エイリアン』とどう繋がるのか?」も描かれはするんですが、逆にそれらの辻褄合わせに腐心し過ぎたのか『プロメテウス』の「訳が分からないけどやりたい放題やってるノリの良いエグさ」が薄れていて全体的なインパクトに乏しいんですよね。
それと最大の難点は、画面がいつでもどこでも暗いことなんですよね。リドリー・スコットSF映画の醍醐味はその作り込まれた美術の美しいデザインとディテールを楽しむということも含まれているんですが、今作はなんかもうモヤッと薄暗いロケーションばかりでフラストレーションが溜まるんですよ。なんだか出来の悪い続編の定番みたいな状況になってるんですよね。あと『エイリアン』と繋げるためなのか見たことのあるようなシーンが多過ぎて驚きが薄い、新鮮さが無いというのもありますね。
そんな訳で『エイリアン・サーガ』の中では結構重要な部分に位置する物語であるにも関わらず、『サーガ』の中で一番地味で面白味のない作品になっちゃってるんですよこの『コヴェナント』。結局「前日譚」って「既に起こったあのことはそもそもどうしてああなったのか」という「既に知っていること」から始めなきゃいけないんで、作るのが難しいってことなんだろうかなあ。『プロメテウス』あたりは『エイリアン』の最初から説明するつもりのなかったはずのあれやこれやにいろんな理由をヒリ出していて楽しめたんですが、『コヴェナント』における「エイリアン誕生の秘密」ってあんまり興味がそそられなくて(ああ、またあのパターンね、という)、そのどうでもよさもこの作品を退屈にしちゃってるんだよなあ。
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