嵐と共にリーサルなあいつが帰ってきた!?/映画『リーサル・ストーム』

リーサル・ストーム (監督:マイケル・ポーリッシュ 2020年アメリカ映画)

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巨大ハリケーンに襲われたプエルトリコの街サンファン!その嵐の中、凶悪強盗団がマンションに押し入った!そこにいたのは避難勧告に応じない住人たちの元を訪れていた二人の警官!嵐のため陸の孤島と化したマンション!強力に武装した強盗団相手に警官たちは万事休す!しかーし!実はそのマンションにはリーサルなあいつが住んでいたのだ!?

ハイ、「リーサルなあいつ」ことメル・ギブソンさんが出演なさっている映画『リーサル・ストーム』でございます。最初に言っちゃうとメルさんは主演って訳ではなく、「避難勧告に応じない頑固ジジイ」という脇役の一人として登場します。最近のブルース・ウィリスニコラス・ケイジが出演した映画みたいに「ネームバリューある脇役」ってことなんでしょうな。

しかーし!(またかよ)ひとたび強盗団の来襲を知るやメル爺さん、かつて警察署長だったスキルを活かし、「頑固ジジイ」から「暴力ジジイ」にジョブチェンジして悪モンどもを成敗し始めるのですよ!いわゆる「地味そうな一般人は実は殺人マシーンだった!」という【元特殊エージェント無双系】のエキスも加味されているんですな!ただし病気を患ってるため大活躍ってほどではなく、記事タイトル「リーサルなあいつが帰ってきたッ!?」というのはちょっと看板に偽りありとは言えるのですが。

実際の主人公となるのは警察官コルディーロ(エミール・ハーシュ)とジェス(ステファニー・カヨ)。訳アリの過去を持ち厭世観たっぷりのコルディーロと警察の仕事大好き!なヤル気満々のジェスが対照的です。二人が訪ねたマンションは殆どの住人が避難しており、避難勧告に応じない数人以外はもぬけの殻です。そこに強盗団があるモノを探してやってくるというわけなんですが、ハリケーンにより通信も途絶え応援も期待できず、こうして人気のないマンション内を敵と味方が鬼ごっこのように追いかけ逃げ回る様が特色となる物語なんですよ。

もうひとつ特色となるのは、拳銃程度の装備しかなく、怪我人への薬も無く、重装備の強盗団相手にどう戦うのか?という部分です。ここで「マンション居残り組」の皆さんが「あの部屋は住人が山ほど武器を持ってたよ」「医者の部屋だから薬あると思うよ」といった情報を持っていて、それを確保するためマンション内を行き来する訳なんですよ。それらアイテムを確保すれば優勢に立てますが、逆に外を歩き回れば敵にも発見されやすくなる、こういった部分でサスペンスとアクションを生み出す点も合理的に感じました。

さらに付け加えるなら、冒頭に提示される「とても分かりやすい伏線」ですな!あまりに「とても分かりやすい」ので笑っちゃいそうになるんですが、逆にこの伏線がどういった形で回収されるのかをじっと見守ってるのが楽しかったし、いざ「発動」した時はやんややんやの大喝采でありました!

それともう一つ、アメリカ映画なのになぜ舞台がプエルトリコなのか?ということでしょう。まあ巨大ハリケーンも沢山やってくるのでしょうし、凶悪なギャングもいっぱいいるのでしょうが、別にプエルトリコじゃなくても成立するお話なんですよね。ところがある展開を迎えることにより「ああ、だからプエルトリコなのか」とその必然性に納得させられるんです。そして強盗団がありふれたマンションを狙うのもそこに理由があったんですね。この辺、うまく出来てるなあと感じました。

あと、出演女優がとてもいい、という部分で好印象でもありました。警官役ステファニー・カヨもそうですが、メル爺の娘役で出演したケイト・ボスワースも同じくらい良かった。この二人、それぞれにスキルを持ち、ある程度タフで、様々な場面で危機に遭いながらもそれを乗り越えてゆくんですよ。ある意味脛に傷持つイジケ野郎の警察官コルディーロよりも溌溂として活動的で、物語を大いに盛り上げていましたね。