ギブソンxウォルバーグのズルムケ親父タッグによるフライト・スリラー『フライト・リスク』

フライト・リスク (監督:メル・ギブソン 2025年アメリカ映画)

メル・ギブソンというとオレのようなロートル映画ファンはまず「マッドマックス」や「リーサル・ウェポン」シリーズの主演を思い浮かべちゃいますが、『ブレイブ・ハート』や『パッション』、『ハクソーリッジ』といった作品の監督として目覚ましい活躍も見せているんですよね。そのメル・ギブソンが新たに監督・製作を務めたのがこの『フライト・リスク』となります。お話は重要参考人と捜査官の乗る小型飛行機を操縦していたのはマフィアの差し金だった!というサスペンス・スリラー。

主演は「トランスフォーマー」シリーズや最近では『アンチャーテッド』に主演したマーク・ウォールバーグ。今作では地毛を剃り上げた禿げ頭を見せつけながら怪演しています!共演に『ジェントルメン』『ダウントン・アビー』のミシェル・ドッカリー。ドラマ版「ダウントン・アビー」シリーズのファンとしては大いに嬉しいところですね。さらに『インターステラー』『スパイダーマン3』のトファー・グレイスが顔を揃えます。

飛行中の小型飛行機という決して外に出ることのできない密室が舞台、登場人物は捜査官・重要参考人・操縦士というたった3人、その操縦士が重要参考人を狙ったマフィアの殺し屋と発覚し、格闘の末拘束されますが、捜査官も重要参考人も飛行機の操縦はできない!眼下は見渡す限りのアラスカの雪山、果たして捜査官はこの窮状を乗り越えることができるのか!?というスリリングかつシンプルな構成の中で展開する作品です。

このシンプルな構成の中でどれだけ緊張感を途切れさすことなくサスペンスを盛り込み、飽きさせることなくドラマを持ち込むことができるのか?というのがこの作品の製作テーマとなるところでしょう。これは見事に成功しており、上映時間90分余りを常にハラハラドキドキさせながら物語を見せてゆくんですね。ハイジャック・ジャンルのストーリーとして特別目新しいことはやってはいませんが、マーク・ウォールバーグの癖の強い演技とメル・ギブソン監督の癖の強い演出が、物語に強烈な味わいをもたらしているんですよ。

マーク・ウォールバーグ、いかにもアメリカの典型的労働者階級のルックスを持ち、一種ガサツで泥臭いイメージがあるんですが、同時にしぶとくてしつこい親父の胆力も感じさせるんですね。そのウォールバーグが今作ではなんと地毛を剃り上げ、頭をテカらせたズルムケ親父となって怪演するんですからもう降参ですよ。今作におけるウォールバーグのズルムケ頭はもはや飛び道具ですね。あの頭でグヘヘとか笑われたらもう勝てる気がしません。なにしろ今回この映画を観ようと思ったのは、予告編でウォールバーグのズルムケ頭を見せられて相当ヤバいものを感じたからなんですよ。

そもそもメル・ギブソン監督自体も性質的にはズルムケ親父じゃないですか。その出演作にしても監督作にしても、さらに個人的な言動にしても、どこか豚の脂身のようなねっとりとしたくどさとしつこさを感じるんですが、これはまさにズルムケのズルムケたる所以ですね。そんなズルムケ親父ギブソンがズルムケ俳優ウォールバーグを使って出来上がった映画がズルムケじゃないわけがありあせん。ただそれだと胸焼けしてしまうので、お澄まし顔のミシェル・ドッカリーを主演にしてバランスを取ったんですね。脂っこい肉料理にはサラダが欠かせませんが、そういったセオリーに則った配役だったのではないかと思えましたね!

【STORY】ハリス保安官補は、重要参考人ウィンストンを航空輸送する機密任務に就く。ベテランパイロットのダリルは、陽気な会話でハリスの緊張をほぐしていく。離陸した一行が乗る機体は、アラスカ山脈上空10.000フィートまで上昇。タイムリミットが気になるハリスだが、頼もしいダリルのお陰で順風満帆な航行になるかに思えた。一方、ひとり後部座席に繋がれるウィンストンが、足元に落ちていたライセンス証を何気なく見ると、そこには今目の前に座るパイロットとは全くの別人が写し出されているのだった。

フライト・リスク - 株式会社クロックワークス - THE KLOCKWORX