アウトロー刑事集団v.s.アウトロー銀行強盗団の息詰まる死闘!/映画『ザ・アウトロー』

■ザ・アウトロー (監督:クリスチャン・グーデガスト 2018年アメリカ映画)

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無頼派刑事集団と知能派銀行強盗団の手に汗握っちゃう攻防を描くアクションサスペンス映画『ザ・アウトロー』でございます。

この映画、なんといっても主演があのジェラルド・バトラーなんっすよ!そう、『300〈スリーハンドレッド〉』、『エンド・オブ・ホワイトハウス』、『エンド・オブ・キングダム』、『キング・オブ・エジプト』、『ジオストーム』と、暴力ならなんでもござれな映画でお馴染みの、あのジェラルド・バトラーさんです!こりゃあ観る前から盛り上がりまくりですよ!

今回のジェラルドさんの役どころは銀行強盗団を追い詰める(例によって)暴力三昧な刑事ニック・オブライエンとなります。そしてこのオブライエン刑事のキャラがとことんいい!!不健康な顔つきとどんよりした眼、放蕩三昧みたいなだらしない格好、口を開けば汚い言葉と皮肉塗れのいやったらしい言動、そして当然暴力の匂いがプンプンする態度、もう絶対近くにいてほしくないタイプの人間ナンバーワンの主人公を演じまくってくれております!正直、今回の敵役である強盗団よりもずっと悪党の風格を漂わせちゃってるんですよ。映画の日本タイトルが『ザ・アウトロー』というのも非常に頷けます。

オブライエン刑事が人食い熊の如き凶暴さを兼ね備えているなら、対する銀行強盗団は人喰い蛇の如き爬虫類的な酷薄さとじっくりじわじわと確実に目的に迫る冷徹さを併せ持っています。そしていざ戦闘開始ともなると正確無比な戦闘兵器となって相手を完膚なきまでに壊滅させてしまうのです。しかし、映画ではその強盗団の中で一番ひ弱そうで戦闘能力の低そうなドライバー、レヴィ(オシェア・ジャクソン・Jr )がクローズアップされながら物語は進んでゆきます。この、鉄壁の刑事VS鉄壁の強盗団というわけではない描写のアンバランスさが従来的なクライムアクション映画から微妙に違ってて面白いんですね。

映画で展開するアクションをあれこれ並べて説明したりはしませんが、この映画のアクションでなにより印象が強かったのは銃撃戦の良さでしょう。延々と続く熾烈な銃撃戦シーンの迫力は、オレなんかは「うお、これ、『コール・オブ・デューティー』じゃないかよ!?」と映画館で鼻息荒くしながら思っちゃいましたね。もうFPSゲームやっているような強烈な迫真性と臨場感があるんですよ。次々と登場する銃器のバラエティもよかったですが、劇場に鳴り響く雨あられの如き銃声の炸裂音がとにかく派手でいい!兎角「映画は劇場で観るべきか否か」の論議はありますが、この「爆音で響く銃撃音」を堪能したいなら、やはり劇場で観る事がマストでしょう!家じゃこんなデカイ音だせないし!

それと面白いのは刑事オブライエンと強盗団とが、作中何度も顔を合わせ、相手の素性を知ったうえで睨み合いを繰り返す、という展開です。相手が強盗団だってわかってるんなら別件でなんでもとっつかまえて締め上げればいいじゃね?とも思っちゃいますが、そもそもこの映画、アウトロー刑事という存在を中心に置くことで、「正義vs悪」「法vs悪」の戦いと言うよりはむしろ傭兵同士の戦闘、ヤクザ同士の抗争、格闘家同士の挑発戦、サムライ同士の鍔迫り合いを思わす演出となってるんですね。この辺りの従来的な刑事モノからの逸脱ぶりが面白いんです。

映画の尺は130分、このテのたいした筋のややこしいわけでもないアクションにしてはちと長いのですが、それはアクション以外の要素が多々挿入されているからでしょう。それは前述の「じわじわと緊張感を高めてゆく睨み合い」の描写もそうなんですが、主人公オブライエンの妻との離婚騒動なんていう本筋とはあんまり関係ない要素が持ち込まれてもいるからなんです。ここはいらない、という人もいるでしょうが、一見野獣にしか見えない主人公に人間的要素を加味し、彼の存在感に厚みを持たせようとしたのでしょう。人食い熊みたいな主人公が奥さんに頭が上がらないなんて!

もうひとつ興味を惹かれたのは、その空撮の美しさです。舞台となるロサンゼルスとその近郊の様々な街や場所が写し出されるのですが、これが観入ってしまいそうなぐらい綺麗。しかもちょっと『ブレードランナー』が入ってます。なんかバカみたいなんですが「ロサンゼルスって広い……」としみじみ思わせてくれたばかりか、ちょっとロス行ってみたくなりました。まあこんだけ銃撃戦があって銀行強盗多くて人食い熊みたいな刑事がいたりするロスは嫌だけど!

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