映画『KILL 超覚醒』:インド発、血塗れ寝台特急、地獄行き。

KILL 超覚醒 (監督:ニキル・ナゲシュ・バート 2023年インド映画)

インド発、血塗れ寝台特急、地獄行き

インド東部ジャールカンド州から首都ニューデリーまで、約1200キロのルートを走る寝台列車がこの映画の舞台となる。夜が更け、乗客たちが眠りにつこうとしたその時、列車に乗り込んでいた40人あまりの武装強盗団が突如暴れ出し、乗客から金品を奪い始める。

さらに強盗団は、大物実業家とその家族が乗車していることを知り、その娘トゥリカを人質に取る。だが、この列車にはトゥリカの恋人であり、インド特殊部隊員であるアムリトも乗り合わせていた。愛する者を救うため、アムリトは遂に血みどろの戦いを開始する!インド発のウルトラバイオレンス・アクション『KILL 超覚醒』、地獄の戦いが幕を開けるのだ。

 密室×寝台列車が生む、息苦しいアクション

「走行中の列車」という密閉空間でのアクション映画はこれまでも多く作られてきたが、『KILL 超覚醒』が特殊なのは、主戦場となるのが**「寝台列車」**である、という部分だ。

人ひとり通るのがやっとの狭い通路しかない寝台列車では、アクションはより限定的にならざるを得ない。敵味方共に密接し、密集し、息苦しいほどの距離の中で戦うことになる。また、奥まった寝台の陰に潜み、奇襲をかけるといった、この舞台ならではのアクションも有効活用されている。

この映画の最大の特徴は、これでもかとばかりに巻き起こるウルトラバイオレンスの嵐だ。銃はほとんど登場しないかあるいは役に立たず、刃物、鈍器、そして拳がひたすら踊り狂う。

痛さ120%の血塗れアクションが執拗なまでに繰り返され、強盗団の非道な所業に怒り心頭に達した主人公は遂に「超覚醒」し、強盗どもを一人また一人と確実に血塗れの肉塊へと変えてゆく。その姿はまさに鬼神であり、しまいには強盗団自身が恐れおののき、慌てふためくほどだ。

血糊の量、痛めつけ方の残酷さ、そして全編に漂うしつこく、暗く、重苦しいトーン。生半可な気持ちでは見られない、覚悟のいるアクションシーンだと言える。

一族郎党で組まれた「強盗団」の人間臭さ

面白かったのは、総勢40人の強盗団が、単なる悪党集団ではなく、**「一族郎党」**で構成されているという点だ。親兄弟、近所の親父といった、どこぞのインドの町のコミュニティが強盗団を組んでいるという構図。

ある意味結束が固いとも言えるが、仲間が殺されると「兄弟が死んだ!」「親父が死んだ!」と泣き喚く姿は、滑稽ですらある。「他人を散々殺しておいて、身内が死ぬとこんなに慌てるのか」という、悪党ながらの人間臭さ、身勝手さが垣間見える場面は興味深い。

そしてもう一つ、この映画の最も優れている点として、**インド映画としては比較的短い「104分」**という尺を挙げたい。

列車内という限定された舞台で展開する物語だからこそだが、毎度3時間近い大作を見慣れているインド映画ファンにとっては、この程度の尺でサクッと見せてくれるインド映画は逆に有難い。限定された舞台のためアクション展開に繰り返しが多くなりがちではあるが、飽きさせない見せ方の工夫は随所に感じられた。


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